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加護を受けし青年  作者: バルデル
第二章 町での日常
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第八話 災厄②

 森から町へと帰るまでずっと考えていた。

 もちろん、彼女の忠告を聞くべきかどうかということだ。

 どう考えても、あそこで彼女が嘘を言う理由はない。

 理由は簡単で、俺を害したいならば、あの場でこちらに切りかかってくればいいだけの話だったからだ。

 がしかし、一方で彼女が俺に忠告を与える理由も分からない。

 仮に町を襲うつもりなら、事前準備は与えないに限るわけだし、こちらに教えることによる利益はないだろう。

 まぁ、迷惑料の様なものとも考えられるか。

 とはいえ、総合的に考えれば、やはり忠告は聞くべきなのだろうと思う。

 昔なんかの本に書いてあったような気がする。

「嘘の忠告は難しい。

 なぜなら、その嘘からさらに悪い結果をもたらすリスクがあるからだ」

 と。

 加えて、俺はあの忠告に悪意を感じなかった。

 さて、ならば、忠告に従いたいところではあるが、俺とエクラはともかく、現在家を間借りさせてもらっているラグナーさんとパルヴィさんはすぐにあの街を離れるというのは不可能だろう。

 あの町にちゃんとした拠点がある彼らが何の証拠もなくあの町を離れるはずはないだろうし、離れるならば、俺とエクラの二人で行くしかない。

 もちろん提案はするつもりだが、間違いなく、拒否されるだろう。


「止むを得ないか?

 そもそも、言われたのはあくまで俺に町を離れろといっただけであって、町が危ないといったわけではないし、そもそも町が危なかったとして、証拠がなければ、説得はできない」


 がしかし、俺はどうしても思ってしまう。

 どうせならば、彼らを助けたいと。

 おそらく、俺が危ないということは、俺を狙っているでもない限り、あの町にいる人はほぼ全滅だろう。

 ならば、無理にでも町から引き離したいところだが、彼らの了解を得ずにやるのは気が引けるし、何より、俺が狙われている可能性も否定できない以上、相手の了解なしに共に来させるというのは最悪の結果を招きかねない。


「無理、か」


 提案をしてはみるつもりだが、説得できるのはよくてエクラ一人のみだろう。

 圧倒的な無力感に苛まれる。

 いや、しょうがないだろう、俺にはどうしようもない。

 そう考えでもしないと自分が壊れてしまいそうであった。




 ◇




「あっ、お帰りなさい。

 後でお話があるのですが……」

「エクラ、悪いが急ぎの話があるんだが、ん?」


 また鍛冶でもしてるのかと思ったのだが、家に入るとすぐ、リビングでエクラが待っていた。

 お互い話があるみたいだしちょうどよかった。


「あっ、ケイさんからどうぞ。

 私のは個人的なことですので」

「悪い、じゃあ先に言わせてもらう」


 普段ならば譲るところだが、ここは先に言わせてもらうことにしよう。

 優先度が高いだろうからな。


「今すぐ、できれば今日中にこの町を出たいんだ。

 理由は後で話すが、できるか?」


 ちょっとした交渉術のひとつ、はじめに無理っぽいことを言って後から妥協案を出して納得させる作戦だ。

 そういうと、エクラは驚いたような表情を見せる。


「驚くのは分かるが緊急事態なんだ。

 できる限り早くこの町を出たい」

「分かりました、私もちょうどそうしようと思っていたところでしたので」

「そうなのか?

 まぁいい。

 とりあえず、ラグナーさんとパルヴィさんに一度話してこようと思う。

 ついてきてくれないか?」

「わかりました。

 お二人は奥の部屋で一緒にいます」

「よし」


 俺はすぐさま、部屋に入る。

「お二人に話があります」

「あぁ、知ってるよ。

 さっきエクラちゃんが言っていた。

 この町を出るんだろう?」

「えっ?」

「先ほど、私が確かにそう伝えました。

 聞いてもらえない可能性も考慮して先にそういう状況を作ろうとしたんです」


 どうやら、エクラもこの町を出たいと考えていたらしく、俺が聞き入れない可能性も考え先に一計を案じたらしい。

 ということは、彼女も持ち前の能力を生かして何かしらの危機を感知したのだろう。


「まぁ、若干寂しいが、仕方のないことだ。

 そうそう、俺たちから、お礼の品といえばいいのかな?

 があるんだ。

 ぜひ受け取ってくれ」

「それって……」


 こないだパルヴィさんが持っていたもののようだが、いったい何なんだろうか。


「これはいわゆる身分証明書になるものよ。

 あなたたち持ってないでしょ」

「ええ、そうですが……」

「旅をするなら必須となるもんだ。

 持ってて損はないだろうよ。

 持っていれば田舎者だとなめられたりおかしないちゃもんを付けられたりすることが少なくなる」

「ありがとうございます。

 それでは私たちはこれで。

 残していくものはすべて差し上げますので」


 エクラが、半ば強引に話を切り上げた後、身分証を受け取り、強引に俺を引っ張っていく。


「ちょっと待ってって。

 あの二人に話をしたいんだ。

 もしかしたら、ついてきてくれるかもしれないだろ」

「残念ですがケイさん。

 それには時間が圧倒的に足りません。

 少なくとも、彼らがいますぐここを離れるのは無理でしょう」

「だがしかしだな」

「一刻も早くここを離れる必要があるんです。

 遅くとも夜になる前には」


 そのままずるずると引っ張られ、家の外へと出る。


「なんでそんなに焦ってるんだ?」

「事情は後で話します。

 すぐに出発しましょう」

「だから少し待てって」

「駄目です。

 私は大丈夫だと思いますが、ケイさんが危ないんです。

 後で理由は話します。

 だからひとまず私についてきてください。

 お願いします」


 いつになく強引なエクラに俺は従うことを決めた。


「分かった。

 それじゃあ行こうか」

「はい。

 少なくとも、この町が視界に入らなくなるまでは急がなくてはいけません。

 全力で行きます。

 私に捕まっていてください」


 俺がつかまったことを確認した彼女は元の姿へと戻り、俺を背中へと乗せて走り出した。

 その背中で俺は考えていた。

 何がそんなに彼女を焦らせるのだろうかと。

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