第五話 散歩
「おお~、かっこいいですね~」
「そうだろう?
打つのも結構大変だったんだが、出来上がったときの満足感と言ったら、すごかったぜ。
この俺がその後、二日も剣を全く打たなくなるぐらいにな」
「なるほど~、でも、これって誰が使うんです?」
現在俺とラグナーさんが見てるのは俺の背の五倍以上はあろうかと言う大剣だ。
刀身だけでも十メートル近いであろう巨大な剣は黒光りしていて、それがまたかっこいいと思う。
まさにロマン装備と言ったような感じだ。
「そりゃあ、おめぇ、十メートル以上背丈のあるやつに決まってんだろうよ。
まぁ、そんなやつ見たこぁねぇが……」
最後は若干目をそらしている。
きっと、思いついて作ってはみたものの、その後で後悔したんだろう。
分かるよ、勢いでやってみたはいいものの、どうしたものかっていうのは。
「流石にこれは使えないかなぁ~。
持てたとしても、体が振り回されそうだ」
「だろうな、流石にお勧めはしねぇよ。
そもそも、持ち運びが不便なことこの上ないしな」
実はあの後、アリシアさんから一緒に体を動かさないかと言うお誘いがあり、森に行くということで、どうせなら片手サイズの黒曜石のナイフじゃなくて、もう少し大きめの獲物がほしいと思ったためである。
別に黒曜石のナイフが使いがったが悪いとかそういうことはなく、むしろ、何でこんなに切れるのかというレベルなのだが、いかんせんロマンが足りない。
と言うわけで、ロマンを求め、武器をさがしてた俺の目に映ったのが、今さっきの大剣であったと言うわけだ。
「そういえば、エクラはレイピアだったっけ?」
「はい、そうですね」
そう言いつつ、どこからともなく剣を出してくる。
エクラが言うには、自分の角を具現化したものなのだそうだ。
「その剣を研究してみたいんだがなぁ」
「駄目です、絶対」
おそろいの作業着的なもの|(エクラがいつの間にか服装をコピーしていた)を着た二人がまた言い合っている。
鍛冶士としては是非研究したいものなのだろうが、いくら頼んでも、それは無理だと思う。
なにせ、俺も触らせてもらえないし、武器として使うときも、相手に直には触れていないらしい。
というか、相当強いと思うのだが、俺と会ったときにはどうして追い詰められていたのであろうか。
そんなことをふと疑問に思うも、いつの間にか、約束していた時間を過ぎていることに気づきちょっぴり慌てる。
「やばっ、遅れたかも」
「あっ、それでしたら、私が鍛えたのを持っていってください。
初めて鍛えたやつなんです、それ」
「おっ、ありがと~」
種族柄、熱中しやすく、時間もほとんど気にしないらしい彼女は|(寿命が相当長いらしい)、こういう鍛冶とかにとても向いているのかもしれない。
そんなことを思いつつ、家を出る。
この家の住人は皆余り時間を気にしない人なので、俺も毒されているのかもしれないな。
そんな言い訳を心の中で唱えつつ、町の外の待ち合わせ場所まで向かうのであった。
「それにしても、私もまだまだですよね。
こんな傷を負ってしまうなんて」
森の中、彼女がぼやいている。
たしか、割と多人数のときだったから何とかなったんだっけか?
「どんなやつらに襲われたんですか?」
「翼の生えた魔族が十対近く一斉に襲い掛かってきたんです。
全く持って情けない。
あんなやつらに遅れをとるなんて」
「魔族ですか……」
うわぁ、なんか強そうだわ~。
「それで、私とプリシラ以外は全滅ですからね。
二十人近く犠牲にしてしまいました」
「それは……」
単純に考えて、二倍以上の強さがあると言うことなのか……。
まぁ、他の人がどの程度の強さなのかは分からないからなんとも言いがたいんだけどさ。
それにしても、二十人の犠牲を経て生き残ったっていうのは重いよなぁ。
そういうことで責任を感じたりはしないのであろうか。
そんなことを考えていた俺の表情を読んでか、彼女が続ける。
「彼らに問えば、あくまで任務を全うしたまでだと言うだろうさ。
そこまで悔やむ必要はないと分かってはいるのだがな、なかなか割り切れんよ」
自分を犠牲にしていくのは好きじゃないなぁ、個人的に。
そういえば、口調が少しだけ砕けてきているが、こちらが素なのかな?
そして、やっぱりイントネーションが少しおかしい。
そんなどうでもいい事が妙に気になる。
「そのプリシラさんは一人にしておいても大丈夫なのですか?」
「今のところ、彼女に傷をつけられるほどの脅威はこの町にはいないからな。
それに、そもそも、在ったとしても今の私では役に立てまいて」
「なるほど、それでリハビリをしようと」
「ええ。
やるならば余裕のない今だと思いまして。
さて、とは言うものの、ここらでやっていても埒があくまい。
さっさと森の深くに行きたい所だが、ついて来られるか?
私の見立てでは中々の腕前であろうし、可能だとは思うが」
「大丈夫でしょう、多分」
実際に見ていないのでなんともいえないが多分大丈夫だと思う。
自分の身体能力ぐらいは、これまでの生活で把握できていると思う。
結構人外っぽいことまで出来るので、多分余裕だと思う。
「それでは参る」
そういうと彼女は、自分の帯剣しているものに軽く触れると軽く何かを呟き、猛スピードでかけていく。
やばっ、意外と速い。
というか、思ったよりもぜんぜん速い。
ちょっぴり焦りつつ、俺はその後を追っていくのであった。




