第三話 我慢の限界
「あ~、やっぱり、森の中は良いわ~。
街とかに比べても、全然こっちのほうが落ち着くわ~」
決して今の家が居心地が悪いとかいうことはないのだが、なぜかストレスがたまるのである。
しばらく森で暮らしていたからその影響なのかとも思ったのだが、同じような暮らしをしていたエクラのほうは全然そんなことはなさそうなので、ちょっと不思議な感じである。
俺のほうが、どちらかといえば、町での生活は慣れていると思うんだけどね~。
てなわけで、俺はなんとかっていう森|(名前を忘れました)でしばし森林浴をしているのだ。
まぁ、日本は自然との調和で有名な国だからね。
森が恋しくなっちゃうのも仕方ないね。
「あれ、日本ではインドア派じゃなかったっけ?」みたいな声が聞こえたが気のせいだろう。
そもそも、これは民族として、本能の部分に刻まれたものであり、個人がどうとかいうことはそんなにかかわらないのだ。
「いや~、平和だね~。
やらなくてはいけないことも特にないしな。
まぁ、こういう環境は人をダメにする気が凄くするけど」
人は何か目標がなくてはどんどんダメになっていってしまうということを誰かが言っていたような気がする。
「もっとも、こういうほのぼのした感じが一番なんだけどな」
そんなことを木の上に登りながら呟く。
どうも、なんかが来たっぽいので念のためだ。
平和が一番とか言ったせいでフラグがたってしまったのかもしれない。
まぁ、別に何が来てもそんなに危険になりそうな気はしないけどね。
ガサガサ
近くの草むらが揺れる。
そして、そこから二つの人影が出てくる。
「まったく、なんでこんなところを突っ切らなくちゃいけないんだ。
森の中を歩くなんて」
「何度目だよ、その話題。
こっちから行ったほうが二日は早くつくんだから仕方ないだろ?」
「この辺の森とかに道をつくれりゃ楽なんだけどな~。
だいたい、なんでこの森は一部だけ突き出してるんだよ、めんどくさい。
森の中だし、何かに乗って移動もできないしよ~」
「このぐらいの距離だったら、普通に走ったほうが早いだろ。
さて、食事をとってからしばらくたったし、距離も近いし、そろそろ行くぞ。
国が一つ落ちたなんて緊急事態なんだ。
早く伝えるに限るだろ」
「ヘイヘイ。
まぁ、エリュウテリアからは、走らなくてもいいしな」
そんな会話をした後、二人は結構なスピードで山の中を駆けていく。
「……。
えっ、何この不穏な空気。
こんなことなら、今すごい危険な動物に襲われるとかの方がぜんぜんいいんですけど……」
ちょっとばかり予想外であった彼らの会話に正直、驚きを隠せない。
で、でもまぁ、実際はここから遠く離れた国の話題かもしれないわけだし、俺自身に何かが襲い掛かってくると決まったわけでもないしな。
それにしても、あの二人は、木の上にただいただけの俺に気づかないようなレベルでよく無事だったな~。
この森って、結構危険なイメージだったんだけど、深くないところは本当に平和な森なのかもしれないな。
「そういえば知ってるか?
カロス聖王国が滅亡したらしい。
今日、ここの領主に連絡が入ったそうだ」
「カロスですか」
若干小ばかにしたような態度をとりつつ、エクラが返答する。
現在は夕食の時間、その報告とは裏腹に、平和なときが流れている。
「へぇ、そうなんですか。
それは大事ですねぇ」
「あぁ、俺もさすがにあの国が落とされるたぁ思ってなかったぜ。
周りから嫌われてはいたが、実際加護っつうのか?
そういうんがあって強かったわけだからなぁ。
魔族との戦いの最前線に立っていた国が滅亡したとなれば、混乱は必至だろうし、武具の売り上げも伸びるだろうな。
明日から忙しくなりそうだ」
「そういえば、この町から戦争に出かけている人とかはどうなっているんです?」
「今のところ報告はないが、カロスが攻め滅ぼされたわけだし、おそらく撤退するだろうよ。
数か月以内にはこの町に帰ってくると思うがな」
完全に知ったかぶりで話を合わせてみたのだが、何とかなったようだ。
「カロスの王都は壊滅状態なんだとさ。
まぁ、ここはかなり離れているし、すぐに危険になることはないと思うが、どうなる事かっつう感じだな」
「いざとなったら守ってくれよ」と笑いながら俺たちに話しかけてくる。
「あぁ、そうそう、明日から鍛冶をしなきゃなんねえんだが、店のほうをお前さんたちに頼んでもいいか?
しばらくは俺ら二人しかいないせいで手が回らなくてな」
「構いませんよ。
ただ、エクラは武器を作ったりできるので、ラグナーさんの手助けのほうが役に立てるかもしれませんがどうでしょう?」
「う~ん、そうだな。
それじゃあとりあえず、明日一日は俺のほうを手伝ってもらえるか?」
「分りました」
そんな感じで話をしていると、いつの間にか、夕食の皿は空っぽになっているのであった。




