第二話 お客さん②
「う~ん、ちょっと遅くなっちゃったなぁ。
いかんいかん」
時間に対して穏やかになってしまったせいか、特に何も考えずにいたら結構遅くなってしまっていた。
お客さんを待たせるとはなんということだと日本なら相当言われていたんじゃないかな~。
というか、日本じゃなくても言われるか。
要反省である。
さて、武具の扱いなど全然わからない俺は、とりあえず丁重に扱うべきかなと思い、その場にあった毛皮にくるんでおいてある。
直接触ると錆びるとかありそうだと思ったからだ。
まぁ、丁寧に扱うに越したことはないだろう。
エクラがきれいにしたやつだし毛皮に関しては問題もないはずだ。
天井にぶつからないようにそっと運ぶ。
そして、店のドアに近づくと、中からカリカリという音が聞こえてきた。
おっ、この音は聞きおぼえがあるぞ。
そんなことを思いつつ、ドアを開ける。
「すいません、お待たせしました~」
「!?
あっ、いえ、大して待ってないので大丈夫です」
中では、細く切ったトーストを、リスのように両手で持って頬張っているお客さんがいた。
皿の中身を見た感じ、割と食べたようである。
まぁ、待たせちゃったからな。
結構食べてしまったことに罪悪感を感じたのか、少し慌てふためき、結局そのままカリカリとパンを頬張ることにした彼女を前に、俺は武具の説明をすることにした。
「こちらでよろしかったでしょうか?」
「あっ、はい。
そちらでよろしかったです」
槍を見せて確認をとる。
「一応使い心地なんかを確認してみてください。
違和感があれば訂正いたしますので」
「分かりました。
外を使わせてもらいますね。
ところでなんですけれど、お弟子さんなんですか?」
「ん?
あぁ、違いますよ。
鍛冶に関して言えばまったくの素人です。
ちょっとした縁でここに泊まらせていただいているんです」
「ふむ、そうですか。
ちなみにご出身は?」
出身か~。
あそこってなんていうんだろうか。
分からないし、場所の特徴だけでも伝えておくか。
「地方の出身なので名前は分からないんですけど、近くに大きな崖と森があるところです。
ちなみに、お客さんはどちらのご出身で?」
と聞いてから思ったのだが、地名を言われてもまったく分からないじゃないか。
ま、別にいいか。
「私もこの町の出身ではないんですよ。
王都の出身で、ここに来たのもごく最近なんです」
「そうなんですか。
ちなみに、一応名前を伺ってもよろしいですか?」
帳簿のようなものをつけているかは知らないし、特に必要といわれているわけではないが、一応聞いておいたほうがよいだろう。
「あっ、私はアリシアと申します。
以後よしなに願います。
それでは、少々失礼しますね」
そう言うとアリシアさんは外にあるちょっとした広場に出て行く。
多分素振りでもするのだろう。
さてと、それじゃあ俺は戻ってくるまでにお土産の用意でもしておきますか。
割と気に入っていたみたいだし、きっと歓迎されるだろう。
「お疲れ様です。
使い心地はいかがでしたか?」
「ああ、とても良いですね。
さすがの腕ですね。
王都にいた職人よりも凄腕かもしれません。
店主さんにお礼を言っておいてください」
「了解いたしました」
「それでは私はこれで失礼します。
またご縁などあれば」
「はい、ありがとうございました」
そういって俺はお辞儀をする。
「あぁ、そうでした。
こちらをどうぞ、先ほどのパンと同じものです。
家に帰ったときにでも食べてください」
「いや、さすがにそれは申し訳ないのだが……」
「待たせてしまったお礼ですから、気にしないでください」
「……。
それならばいただこうかな。
ありがとう」
「いえいえ、それではまた」
「ちょうど良かったかもな。プリシラに何か買って帰ってあげるつもりだったが、これのほうが喜ぶだろう」などと小声でつぶやいていることからして、連れでもいるのかな?
まぁ、ペットの可能性も否定できないが。
まぁ、お客さんの事情に突っ込むのはマナー違反ってなんかの本で読んだ気がするので、聞くのはやめておこう。
「あっ、お帰りなさい、パルヴィさん」
「ごめんなさいね、遅くなってしまって」
その後しばらくしてパルヴィさんが帰ってきた。
「あれ、その箱は何ですか?」
「ん?
あぁ、この箱は~、今は秘密ね。
もう少ししたら分かると思うからちょっと待っていてくださいな」
「ありま、残念」
そんなこんなで今日は終わりを迎えるのであった。
ちなみに、エクラとラグナーさんは夕食の時間になっても一切部屋から出てこず、パルヴィさんに怒られていた。
エクラはともかく、ラグナーさんはいい加減学んだほうがいいと思うんだ。
まぁ、そういう習慣みたいなものははなかなか直らないものなんだけどね。




