第十六話 鍛冶師の家
しばらく歩いていると、森が開け、町が目に入る。
森から大体一キロぐらいの場所にある町は、高層ビルはなかったものの、中央付近に高い壁がそびえたっていた。
多分城壁みたいな感じなのであろう。
その周りに広がっている町は辺りはすでに暗くなっているにもかかわらず、活気に満ちていた。
「ふう、やっと着いたか」
「ええ、大変だったわね」
ラグナーさんとパルヴィさんが会話をしている。
「この街ですか?」
「あぁ、そうだ。
ここが、エリュウテリア。
俺達が住んでいる町だよ」
「ようこそ、エリュウテリアへ」
笑みを浮かべて二人がこちらに話しかけてくるが、二人には見えないだろうけど、エクラの表情が若干硬い。
「そんなに硬くならなくても大丈夫だって」と彼女に伝えると、心なしか、表情がゆるんだような気がした。
「ラグナーさんの家はどのへんなんですか?」
「俺の家は町の端のほうだな。
職業柄そっちのほうが都合がいいんでな。
ついてきてくれ」
「分かりました」
というわけで俺は、ラグナーさんについて、彼の家へと向かうことになったのであった。
「荷物もでけぇみてぇだし、ここから入ってくれ」
しばらくして、、俺たちはラグナーさんの家に到着していた。
彼の家はなかなか大きく、今入れと言われたのは、おそらく作業場と思わしき所である。
「ここは何ですか?」
「ここは作業場なんだ。
家事の道具と化がそこら辺に置いてあるだろ?
よし、とりあえず、荷物はそこら辺においておいてくれ。
あぁ、入口はこっちだ」
「「分りました」」
そう答え、背負っていたリュックと竜の死体を置き、ラグナーさんのほうへと向かう。
「パルヴィが料理を作ってくれるから、ちょっと待ってな」
そばにあるランプをつけながら、ラグナーさんが俺たちに言ってくる。
「よし、とりあえずそっちに座ってくれ」
二か所に置いてあったテーブルをくっつけ、四人が座れるようにした後で、ラグナーさんが椅子を指さす。
「「失礼します」」
そう言って座る俺達。
すると、しばらくして、パルヴィさんが食事を運んできた。
「時間がなくて簡単なものしか用意できないの。
ごめんなさいね」
「いえ、すごく豪華じゃないですか」
出てきたのはパンとスープという、質素といえば質素なものではあったが、そもそも、狩った肉と採った果実しか食べてなかった生活なので、全然豪華な部類に入ると思う。
そして、夢にまで見た炭水化物である。
あっ、蜂蜜を持ってくるの忘れた。
まぁ、別に今はいっか。
そう思い、とりあえずお腹を満たすことにする。
出てきた食事をいただきながら、彼らと話をする。
「いや~、それにしても、今日は助かったよ。
ありがとな、お二人さんとも」
「いえいえ、困った時はお互いさまというやつです」
「そう言ってもらえると助かるな。
あぁ、そうそう、改めて自己紹介させてもらうな。
俺はラグナー。
一応、鍛冶師をやっているんだ。
でこっちが妻のパルヴィだ。
今日は本当に助かった」
「いえいえ。
で、俺はさっきも言いましたが、ケイです。
でこっちが、エクラです」
「よろしくお願いいたします」
森から帰ってくる途中にも一応話をしたが、あらためて自己紹介をする。
「それにしても大変でしたね、あんなところで巨大蜘蛛に襲われるなんて」
「あぁ、まったくだ。
あんたたちがいてくれなかったら、今頃餌食になっていただろうしな。
ところで、あんたたち二人は何をしていたんだい?」
「ほかの場所からこの町に向かってきていたんですよ。
で、叫び声が聞こえたから、助けに行ったということです」
「なるほどな。
それにしてもあんたなかなかの強さなんだな。
途中から覚えていないが、あいつらを全部倒したんだろう?」
「えぇ、まぁそうですね」
「どうぞ」
「ありがとうございます」
飲み物を出されたので、お礼を言いつつ、話を続ける。
「戦争のせいで、全然人員がいなかったんでしたっけ?」
「あぁ、そうさ。
うちの息子なんかも戦争に駆り出されちまったせいで取りに行ける人がいなくてな」
とまぁ、こんな感じで話をしつつ、飲み物を手に取り飲む。
「って、これ酒じゃないですか!」
「ん?
もしかして飲めなかったのか?」
「いえ、そもそも飲んではいけない年齢では?」
「お前さん幾つだい?」
「十七です」
「なら大丈夫じゃねぇか」
どうやら、飲酒は十七でも大丈夫らしい。
なら飲んでもいいか。
果実ベースらしく、飲みやすい。
というわけで、飲みながら、情報を得ようと、いろいろと話をすることにする。
「そういえば、この町って入るのに手続きとかいらないんですね」
「中央に行くなら、必要だが、ここなら問題はないな。
この町は森に行ったりする人も多いし、面倒な手続きは極力省かれているんだよ」
「まぁ、お金もかかりますし、時間も食いますからねぇ」
「エリュウテリアは基本面倒なことを嫌う傾向があるからな。
ほかの所じゃ形式を重視するところもあるみてぇだけどな」
「そうですねぇ、個人的には自由なほうが好きです」
「まぁ、誰しもそう思うだろうさ。
にしても十七か。
十七でその強さっつうのはなかなかやるな~。
どこかで傭兵とか、騎士団にでも所属していたのか?」
「いえ、してないですよ。
もししてたら、装備が小型のナイフだけなわけはないじゃないですか」
俺の持っている黒曜石のナイフは全長が十五センチもない。
これをメインで戦うのは忍者くらいだと思う。
「ん~、まぁ、そうかもな。
鎧はしっかりとしている奴に見えたんでそう思ったんだがな」
「おっ、なかなかいい鎧に見えますか?」
自分のセンスが認められた気がして少しうれしくなる。
「あぁ。
どっちも無骨な気はするが、なかなか動きやすそうだし、いい防具だと思うぜ。
材質は何だ?
少なくとも、ここら辺では見ないようだが」
「さぁ?
あんまり興味がないのでわからないですね」
「まっ、鍛冶にかかわらない奴からすればそうだな。
性能が良ければそれでよしだしな」
ハハハと笑いながら、会話をつづけていく。
そんなこんなで俺たちは結局夜遅くまでいろいろと話を続け、泊めてもらうことになったのであった。
もとから部屋は余りまくってんだし遠慮するなということらしく、持ち金もない俺たちはありがたく泊めてもらうことにした。
そもそも、洞窟で暮らしてきた身なので、野宿でも全然大丈夫なのだが、どうせなら家で寝たほうがいいしな。
というわけで、部屋を用意してもらう。
「とりあえず、やさしい人たちでよかったな」
「そうですね」
エクラが、二つ部屋を準備してもらうのは悪いというので同じ部屋で泊ることになった、俺達は寝る前に少しだけ会話を交わす。
初めは女性と同じ部屋というのは緊張したものだが、今はとっくになれたので問題ない。
ベットのほうはエクラに譲り、俺は壁に寄りかかって眠りにつくことにするのであった。




