第十四話 移動
「はいは~い、そこは邪魔だからどいてね~」
「邪魔です」
そんなことを言いつつ、俺とエクラは森の中を疾走する。
ただ走るだけならもう少し早く走れそうなのだが、いちいち周りから襲ってくるやつらがいるため、思ったよりも速度が出ない。
(はぁ、結構時間がかかりそうだなぁ。)
襲いかかってくるヴェロキラプトルみたいなやつらを文字通り蹴散らしつつ、俺たちは森の中を駆け抜けていくのであった。
「っ!!
止まってください」
走り続けること約八時間。
すでに日は西に傾き始めていて、恐らくは四時ごろと思われる。
八時間、足元の悪い道を重い荷物を背負いながら走り続けたにもかかわらず、ほとんど疲れていない自分の体に驚いていたところでエクラが俺に声をかけた。
「どうした?」
「右前方のほうで、争いが起こっています。
片方は人型をしていますから、人かもしれません」
「おっ!
ていうか、もうそんなに近くまで来ていたのかな?」
人がいるということは近くの町までせいぜい十キロぐらいなんじゃないかな?
この時間だし、そんな遠くにはいないだろ。
まぁ、キャンプという可能性はあるが。
「ええ。
このまま直行すれば、半刻ほどで到着すると思います」
「おお、いつの間に」
自分の身体能力が上がっていたのは分かっていたが、ここまで早く移動できたのは予想外である。
「それで、いかがいたしましょうか?」
「ん?
俺に言ってきたってことは助けたいってことなんじゃないの?」
「いえ、先ほど、近くで服装なんかを見てからとおっしゃっていたので一応お伝えしたのですが……」
「あぁ、なるほどね。
うん、まあ、見てみるか。
もしピンチっぽかったら、ついでに助けるっていう形で行こう」
「了解しました」
別にピンチじゃなかったら助ける必要はないし、迷惑かもしれないしな。
そんなことを考えつつ、エクラの指差す方向へと向かう。
すると……。
「クソッ、すぐに医者に見せやるからな」
沢山の巨大蜘蛛に囲まれた鎧を着た二人の人がいた。
しかも片方は間違いなく、重症であり、力なく地面に倒れこんでおり、もう一人も満身創痍に見える。
うん、間違いなくピンチだろうね。
「服装はあんな感じに変えればいいな。
よし、それじゃあ、助けておきますかね、見捨てるのも悪いし」
「了解しました。
私は、あちらの倒れている方をとりあえず治療します」
「オッケー。
女の子にあんな気色悪い巨大蜘蛛の相手をさせるわけにはいかないし、俺は治療なんてできないからね」
正直、俺自身もあんな気色悪い巨大蜘蛛の相手なんてしたくはないが、俺以外にできるやつがいないのでしょうがない。
腰に差していたナイフを両手に持ち、巨大蜘蛛のほうへと向かう。
そんな俺の目には、今にも噛まれそうになって、絶体絶命の一人が見えた。
「トウッ!」
流石に間に合わない可能性が高いので、先にナイフを投げて、その一匹を仕留めにかかる。
仕留められなくても、彼の命を救うぐらいはできるだろう。
そう思い、投げたナイフはしっかりと蜘蛛に命中してくれたようで、力なく崩れる様子が俺に見えた。
投げナイフって便利ですね。
「ほいほい、そこの人。
助けがきましたんでちゃっちゃとそこをどいてくださいな」
できる限り軽い感じで、目の前で今にも襲い掛からんとしていた巨大蜘蛛が息絶えるのをみて呆然としていたその人に話しかける。
「あ、あぁ」
「もう一人はうちの相方が治療してくれると思うけど、心配だろうから見てきなよ。
こいつらの相手はひとりで十分だと思うから」
別に俺は相手の戦闘力を測る機械なんて持っていないので、「戦闘力たったの五か、ゴミめ」とかそういうことがいえるわけではない。
がしかし、とりあえず負ける気は全くしなかったし大丈夫だと思う。
そう告げると同時に、仲間を倒されて怒り来るって襲ってきた蜘蛛に回し蹴りを叩き込む。
うん、うまく仲間を二、三匹巻き込めたな。
とはいえ、全体で二十匹近くいるしどうしたもんかねぇ。
きもいのであんまり触りたくないんだけど、ナイフは後二本しかないしな~。
そんなことを考えつつ、呆気にとられているようなその人を見ていると、こちらが大丈夫といったのが嘘じゃないと分かったようで、お礼を言いつつ、もう一人のほうへと駆け寄っていく。
さてと、それじゃあ、こいつらをどう料理するべきかねぇ。
仲間が傷つけられたのを見て、引いてくれるとかあればいいんだが、そんな様子はない。
「しゃあないかな」
ナイフじゃ無理だし、さっきみたいに蹴りを撃ちこんでいこうと思い自分の足を見てみたのだが、よくよく見れば足元には、石がいくつか落ちている。
「別にこれでいいか。
よくよく考えれば、石なら普通に落ちているわな」
というわけで、近くにある石を広い、投げつけていく。
そして三分後、その場に生きた蜘蛛は一匹もいなくなるのであった。




