第十三話 持ち物チェック
「さてさて、何を持っていくかなんだが」
そう言って俺は洞窟の中を見渡す。
この洞窟はそこまで大きいというわけではなく、せいぜい八畳程度である。
「そもそもほとんど物がないな。
せいぜい蜂蜜ぐらいか」
とはいえ、高さはそこそこあることと、物がほとんどないことにより、実際よりもだいぶ広く感じるのだが。
ちなみに、現在の持ち運びできそうな持ち物をまとめると、
・蜂蜜の瓶×2
・毛皮×多数
・ナイフ(黒曜石製)×3
のみである。
「我ながら、よくこれで生活できていたな~」
食料の保存なし、水の保存もなし、娯楽もなしである。
記憶にある自室は本やらゲームやらで溢れかえっていたというのに、ここは物がほとんどない。
「ケイさん、これどうしましょうか?」
「ん?
あぁ、いや、別に持っていく必要はないんじゃないかな」
エクラが呼ぶのでそちらを見てみると、彼女が彫った、テーブルとイスが置いてあった。
「重いし嵩張るから持っていきずらいし、なくて困るものでもないからね」
「そうですか……。
自分で結構時間をかけて作ったものなのでかなり愛着があったんですけどね」
少し悲しそうである。
「そうだ、石の瓶って予備あったっけ?」
「えっ、はい。
小さいですけど二つありますよ。
ハッ、もしかして蜂蜜も置いていってしまうんですか?」
ものすごく悲しそうな顔をしている。
作られたテーブルとイスが哀れである。
「大丈夫だよ、それは持って行くからさ。
一応水を汲んでこようかなと思っただけ」
「あっ、そうなんですか。
それじゃあお願いしますね」
そう言って、瓶を手渡してくる。
「ほいほい、それじゃあちょっと待っていてね」
よし、じゃあ、さっさと水くみに行こうかね。
コポコポコポコポ
近くの水源で水を汲む。
周りが森ということからも想像がつくかもしれないが、とても綺麗な水である。
おいしい水というのはこういうことを言うんだと思う。
「……、あれは何だ?」
俺から見て、ちょうど水源の反対側にある俺と同じぐらいの大きさの岩が目に入る。
どうしてかは分からないが、なんとなくその岩に違和感を覚えたのだ。
別に危険ということもないだろうと判断し、その岩に近づいていく。
「何なんだ、これは?」
近づいてみて、その違和感の正体がわかる。
正面から見ればただの岩であったのだが、後ろ半分が完全になくなっていたのである。
断面は滑らかで、どうすればこうなるのかというような綺麗な断面であった。
いや、もとからこういう岩であったという可能性があるのかもしれない。
もし周りにそれっぽいのがいくつかあれば、その可能性は高まるだろう。
そう考え、周りを見渡してみることにする。
すると、近くの岩の上に、きらりと光る何かがあった。
「何かの動物の毛なのかな?
もしくは、蜘蛛の糸の可能性とかもあるか。」
ある程度の長さをもった銀白色の毛のようなものが一本だけ、その岩には落ちていた。
「ま、これは特に関係ないかな。
よし、少しだけ周りを見てみよっと」
というわけでその周辺を見て回ることにする。
すると、ここまで綺麗な断面ではなかったが、同じような意思がいくつか落ちていた。
うん、このことから考えても、自然現象と考えていいんじゃないかな?
昔はこの辺に川が流れていて、水で削れたとかなのかもしれんしな。
「さてと、ちょっぴり時間を食っちゃったしさっさと戻ることにしますかね」
こうして、目的の水くみを終えた俺は洞窟へと戻るのであった。
「よし、準備完了だな」
翌朝、俺はエクラとともに洞窟の外に立っていた。
別に昨日出てもよかったのだが、距離はそこそこあるということで、あえて一日待つことにしたのだ。
どうやって作ったのかは不明だが、いつの間にかエクラが毛皮で蜂蜜の瓶を背負えるようなリュックサックのようなものを作っており、俺たちは二人とも、それを背負っている。
結構丈夫にできているらしく、石の瓶を入れても破れるようなことはなかった。
「持ち上げるよ~、一、二の三」
掛け声とともに、二人で一緒に竜の死体を持ち上げる。
一瞬竜が神聖化されていたらどうしようなどとも思ったのだが、その場合は竜の遺体を見つけたので、埋葬したいと言えば大丈夫だろうということから、やはり持っていくことにした。
「さて、出発するよ~」
「了解です」
そんなこんなで俺とエクラは、彼女の記憶で人里があるという方向へと向かうことにするのであった。




