第十二話 移動開始
「あぁ、そういえば、あの死体を回収しておくか」
しばらくして土煙が晴れた後、俺はエクラに向かってそういう。
もし、これから人里に行くんだとすれば、何かお金になりそうなものを持っていったほうがいいだろうからな。
まぁ、持ち運びをどうするのかという問題が残るんだが。
『剥ぎ取り』を三回ぐらいやってなぜか素材が手に入るみたいなことはないので、持ち運ぶにはかなりの労力が必要そうである。
「そうですね、血のにおいに引き寄せられて、他の生き物を呼び寄せかねませんし」
「頼めるか?」
「任せてください」
エクラに処理を任せた俺は、死体の移動方法を考える。
(う~ん、結構でかいし、台車みたいなものが必要か?
いや、でも台車なんて作ったところで森の中ではろくに動かせなさそうな気がする。
持ち運ぶのはあきらめたほうがいいかな?
なんとなく価値のありそうなところだけ選んで剥ぎ取っていく感じがベストかも)
「ケイさん、ケイさん」
「ん?
どうした」
「前のほうを持ってください。
流石に一人では厳しいです」
ふと見ると、処理を終えたエクラが、後ろのほうを持ち上げて、こちらに助けを求めていた。
あれ?
思ったよりも軽いのかな。
「それ、見た目よりも軽いのか?」
「?
どうなんでしょうか」
「ちょっと待っててな。
……。
よいしょっと」
竜の死体の前に駆け寄り、持ち上げる。
(あぁ、なんだ、思ったよりも軽いんじゃないか)
持ち上げてみて分かったのだが、この竜の死体はやはり見た目よりも軽い。
ぶっちゃけ、俺一人でも持とうと思えば持てそうだ。
ただ、体の大きさ的に持ちにくそうでもあるが。
というわけで俺たちはそのまま、拠点としている洞窟へと戻るのであった。
「提案がひとつあるんだけどいいかな?」
「はい、何でしょうか」
洞窟へ戻ってすぐ、俺はエクラに話しかける。
「人里が向こうにあるって言っていただろ。
そこに、行かないかい?」
「……。
人里ですか?」
「あぁ、そこだったらここよりも安全だと思うし、どうかな?
もちろん、嫌だったら別にかまわないんだけどさ」
「私は……。」
「ん?」
「私のようなものは歓迎されないと思うんです。
他の人がいるようなところでは」
エクラが少し小さな声で俺にそう告げてくる。
その声には若干の諦めが入っているような、そんな気がした。
「そうなのかもしれないな。
でも、それは実際にいって見ないとわからないと思うよ。
エクラは実際にそこにいったことがあるのかい?」
「……。
いいえ、ないです」
「だったら一度行ってみない?
もし、何かあれば、俺ができる限り守ってあげるからさ」
「そう、ですね。
何事も経験かもしれません。
分かりました、行ってみることにします」
「おっ、そうか!
よし、それじゃあ、準備をしないと」
「ところでなんですけれど、私ってちゃんと人に見えますか?」
「ん?
俺の知っている人と同じなら問題はないと思うが、服装はどこかのタイミングで変えたほうがいいかもしれないな。
そこに住んでいる人のを見て真似れば大丈夫だと思うよ」
「そうなんですか、よかったです。
実は私、人にあったことってないんですよね」
「へぇ~って俺は?」
「?
だってケイさん、純粋な人じゃないですよね?」
そういえば、初めてあったときの俺は鱗ありモードだったな。
よくよく考えてみると、今までやってきた動きとかからして、俺の体も純粋な人じゃないのかもしれない。
ここは少なくとも、現代日本ではないと思うし、そうなると俺は人といっていいのか怪しい気もするな。
ゲームとかで出てくるリザードマンみたいなものなのかもしれない。
う~ん、さっきはあんなことを言ったが、もしかしたら、俺も受け入れてもらえない可能性とか出てきたな。
大丈夫なのだろうか。
急に少し心配になった俺なのであった。




