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「お疲れ様でした。本日で治癒魔法による治療は終わりになります」
「はい、ありがとうございます」
私が治療院に担ぎ込まれてから二週間。
ルシエルさんの見立て通りに私の治癒魔法による治療が終わった。
いまだに体は痛む時はあるが、これからは薬で痛みを抑えながら自己治癒力によって怪我を治していくことになる。
退院まではあと二週間ほど様子を見る必要があるそうだが、経過は良好そのものだそうだ。
この二週間、思えばルシエルさんには本当に見苦しいところばかりを見せてきた。
そんな自分を少し恥ずかしく思う反面、この人に受け止めてもらえて良かったと思う。
おかげさまで心の傷はいまだに疼いて血を流しているけれど、ふとした瞬間に涙がこぼれてしまうようなことはあるのだけれど、それでも静かに自分の感情を見つめることができた。
後ろを振り返っても、また前をもう一度向けるような気分になれた。
「今後の投薬治療はルクス先生に引き継ぐことになるでしょう」
「え」
だからルシエルさんのその言葉には虚をつかれた。
「この後も……引き続きルシエルさんが診ていただくのでは……?」
「申し訳ありません。実は……わたしはこの治療院所属の治癒術師ではないんです。ただ、あなたの治療には高度な治癒魔法が必要で、それを扱えるのがあの事件の際にたまたま居合わせたわたしだけだったのです。ですから治癒魔法による治療が終わった今、わたしはわたしが本来為すべきことを果たしに戻らねばならないのです」
「そ、うだったんですか……」
穏やかな声音が告げる言葉が残酷な宣告のようだった。
寂しいを通り越して、とても心細くなる心境に、私はこの二週間という短期間の間にこの人に心を許して甘えていたことを知った。
「そのような顔をなさらないでください」
あまりにしょんぼりしてしまっていたのだろう。
視線を落としてしまった私に、ルシエルさんが苦笑をして慰めの言葉を口にした。
「ルクス先生も大変優秀な医師でいらっしゃいます。わたしよりもしっかりしていて、頼りになる方です」
「はい……」
「それにもう二度と会えなくなるわけではありません。レティシアさんが退院した後、またどこかでお会いする機会もあるでしょう」
そう告げるルシエルさんの言葉に私は胸に詰まった感情に返事ができなかった。
ルシエルさんはそんな私にも穏やかに微笑みかける。
「ですからこう言わせてくださいね。レティシアさん、またいずれお会いできる日を楽しみにしております。あなたの日々が健やかに、安らぎに満ちたものでありますよう。神の恩寵があなたにありますように」
そうしてルシエルさんが自分の胸の前で手を組み、祝福の言葉を口にした。
神官の仕草に私はこの人が初めて神官だったことを知り、この人のことを何も知らないことを知った。
「レティシアさん、どうかお元気で」
そうだというのに、この人は軽い会釈と共に私の前から去ってしまった。
残された私は、ただ突然自分の胸に空いた空虚な穴に呆然としたまま彼を見送ることしかできなかった。




