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絶対に目立ちたくない元社畜おっさんの職人NPCスローライフ~推しモブに成り代わってしまったので代わりに夢を叶えます~  作者: 嘉神かろ
第2章

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第60話 モブサブの武器スキル!

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 苦しい。熱い。きっと痛いのだろうが、もはや分からない。これが何かは分かっている。悪魔族の炎の魔法だ。あの時ケインに向けられ、そしてサクラムドラゴの翼を消し飛ばした蒼炎だ。


 くそっ、意識が飛びそうだ。明るいのに、視界の端が暗い。確認する余裕は無いが、きっと俺のHPは凄まじい勢いで減っているだろう。


 いつまで続く? HPは本当にもつか? この手の魔法ならそこまで効果時間は長くないはずだろ。早く終わってくれ。


 どれだけそうやって祈っていたのか。不意に新鮮な空気が肺を満たして、ひんやりと肌を刺す。装備は概ね無事で、多少は修理も必要という程度。しかしその下が焼けただれているらしく、引っかかるような感覚があった。


 勇者のやつは、よし、無事だ。間に合った。これだけダメージを受けた甲斐があった。

 HPは、残り一割ってところか。徐々に回復してはいるが、まともに盾で受け止められるのは一度か二度だな。


 まったく、ケインのやつに当たらなくて良かった。あいつのVITと耐性でこんなもの受けてたら、灰も残らない。


「また妙な真似をする」


 あいかわらずの余裕のある声。しかし幸いにもと言うべきか、悪魔族も無事な姿ではない。貴族みたいな服は破けてボロボロで、紋様の入った墨の肌が大きく見えている。


「無傷の剣士を見るに、味方のダメージを肩代わりしたのか? 見上げるべき自己犠牲よ」

「ただの合理的判断だ」


 本当はダメージカットの効果もあるが、そこまで教える義理もない。それに小技だけで十分と判断されても困る。


「大丈夫かい?」

「なんとかな。それより、回復するまで前にとか考えるなよ」

「分かってる。悔しいけどね」


 これがゲームか、せめて近いステータスならそれも手だった。だがダメだ。それだと、勇者はすぐに死んで詰む。

 そもそも勝ちの目があるのも、こいつの天才的なセンスで圧倒的なステータス差を越えて攻撃を入れられているからだ。


 その上、ケイブタランチュラの糸からあんなに早く抜け出されたとなると他の行動阻害系にも耐性があると見た方がいい。


 それでも、やるしかない。


「本当に面白いやつらだ。もっと手札を見せてもらいたいところだが、あまりのんびりしていては本来の目的を達成できない」

「本来の目的? ミラディスの街を滅ぼすことか?」

「いや、それは手段にすぎない」


 どういうことだ。それを聞く前に、悪魔族の野郎が地面を蹴る。

 迫る戟は上段から。これは一歩出て受け、いやダメだ。魔法が来て死ぬ。


 攻撃チャンスを作ることは諦めて右へ避け、魔法の詠唱を『シールドバッシュ』のノックバック効果でキャンセルする。

 よし、成功。隙を作れないまでも魔法対策には十分だな。


「俺のMND(マインド)だと大した回復量じゃないけど――『ファストヒール』!」


 いや助かる。

 ただでさえ回復量の少ない基本職のスキルだが、それで増える数パーセントのHPで選択肢は増える。


「足掻くか、人間」

「そりゃあな!」


 あと少し、あと少しのはずなんだ。余裕を見せているがこの傷だ。勝利は見えている。

 そのはずなのに、隙が無い。勇者に殴らせるタイミングが無い。


 せめて魔法一発を受けられるだけHPが回復したら攻撃に転じやすくなるんだが、盾の上から削られる分と自動回復分はとんとん。先に俺の体力がつきかねない。


 猛攻をどうにかさばきながら隙を窺う。この世界がゲームを土台に作られた場所なら、隙がないなんてことはあり得ない。必ず、どこかにあるはずだ。


 行動阻害系はダメ。状態異常も悪魔族には基本効かない。属性系も勇者が色々と試していた。

 となると、あとは……部位蓄積、翼か!


「二秒ください!」


 あの動き、勇者も気付いたな。ならその二秒、意地でも作ってやる。


「『スラスト』!」

「むっ」


 今日初めての俺からの攻撃。ここまであれこれと見せてきたんだ。この悪魔族なら当然警戒を見せ、防御態勢に入る。


 すかさずキャンセル。長物を引き寄せ体の前に持つ悪魔族は、すぐには攻撃に移れない。


「『シールドチャージ』!」


 その槍を押さえ付けるように、盾を構え突進する。

 バッシュよりも長い距離を移動するこのスキルなら、勇者が攻撃する間あの戟を押さえ付けるくらいはできる。


「さすがっ! 『ソルブレイズスラッシュ』!」


 勇者の剣が、俺の作った剣が太陽のごとき炎を纏い、振り下ろされる。それは確かに悪魔族の背中の翼を切りつけて、俺の腕にまで衝撃を伝えた。


「ぐぅっ……!」


 同時に抵抗が弱まり、悪魔族が膝をつく。特殊ダウンのモーションで間違いない。


「たたみかけるぞ!」」


 発動するのは三つのスキル。職人弾を除けばアルゴスとして出せる最大火力の技。


 いつかケインに使った『アースインパクト』に、ハンマースキルの『スマッシュ』と鍛冶師スキルの『渾身打ち』を乗せる!


 本来ならばあり得ないスピードで溜めが完了。そのまま大地を殴りつければ、砕け盛り上がった岩盤が悪魔族を襲う。

 『スマッシュ』と『渾身打ち』の倍率も足された一撃だ。はるか格上の悪魔族にも十分通じる。


 岩盤に挟まれ出てこない悪魔族だが、これで終わるはずがない。それは勇者も同意見。既に風と雷の力を剣に宿し、追撃の耐性に入っている。


 あのエフェクトは、二つの魔法剣スキルの同時行使だ。くわえて構えは剣の上位スキルにある連撃のもの。どこで知ったのかは知らないが、あいつの攻撃力なら十分決着の一撃になり得る!


「『ソードダンス・嵐』!」


 ひと太刀目が岩盤を切り裂き、二太刀目が顕わになった悪魔族の腕を切り裂く。そのまま続けられる流麗怒濤の剣撃が土煙を晴らし、血しぶきが森に線を描いた。


「はぁぁぁあああっ!」


 十一連撃。こういったチャンスタイムしか使えないほどの数の連続攻撃に悪魔族は動けない。


「くっ、――舐めないでもらおう!」


 だが僅かに足りない。うっすら予想していたとおり、過去の悪魔族の半分ほどの時間で特殊ダウンが終わり、反撃に転じようとしてくる。

 直後、探知系のスキルが戦場の方に嬉しい気配を捕らえた。


「流れがいいと、幸運も続くもんなんだな。『シールドバッシュ』!」


 もしもに備えて距離を詰めておいた甲斐があった。盾で押し出すように殴りつけ、目的の位置まで押し込む。

 その瞬間、木々の奥、街のある方角から、薄い緑色の光が飛び出した。


「いったい何が!?」

「ケインの盾の効果だ!」


 攻撃を受けることで蓄積した属性魔力を一気に解き放つ、あの盾の切り札。

 それが出たってことは、向こうはもう終わりだろう。


「なら俺たちものんびりしてられないな。勇者! 剣の力を使え!」


 叫びながら投げるのは、再びケイブタランチュラの糸。拘束時間はさらに短くなっているはずだが、ほんの瞬きの時間でも稼げたら十分だ。


「全力でいくよ! 俺の魔力も持ってけ! 『ライトニングバースト』!」


 剣が輝き、込められた魔法を解放する。

 轟音が轟き、薄暗い森を昼間よりも明るく照らした。


 解放されたその雷は、違うことなく悪魔族のいるはずの位置に落ちる。

 緑の光、風の属性魔力の消えると同時に雷は悪魔族を貫いて、あの頑丈な体を墨へと変えた。



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