勇者、凱旋する
数日後。
クエストベースを5頭の地竜に引かせて町に到着したアリナは、町の人々の歓迎ぶりに驚いた。門をくぐる前から人々の歓声が聞こえてきており、中に入るとメイン道路の両側に人が立ち手を叩いて歓迎している。建物の窓からは紙吹雪が投げられ、アリナたちを祝福している。
「これは一体どういうこと?」
アリナは目を丸くした。モンスターに襲われていた町を救って、その後に歓迎されることはよくあるのだが、何もしていない町で最初からこのような大歓迎を受けることは記憶にない。
「3つ首竜を倒したせいかしら?」
隣国で強大なモンスターを倒したことは、近隣諸国にも伝わっていると思われる。見事に国の危機を救ったコーラン王国は、国を挙げての祝賀会を1週間にわたって開催した。
アリナたちは連日連夜の歓待を受ける。
そしてやっと解放されて、このサウザント公国の町エリアンへとやって来たのだ。
「これはどういうことかしら。ユート、あなたは偵察にこの町に来たことがあるわよね」
アリナはそう尋ねた。付き人のユートとルーシー。
そして新しく加わったクラウディアの3人は、熱烈歓迎でコーラン王国から離れられないアリナたち勇者パーティのメンバーを置いて、次の移動先であるサウザント公国へ行ったのだ。
「はい。この町でもアリナ様もご高名は伝わっております。アリナ様が来るという話だけで、この町に巣くっていた悪人どもも滅びてしまったくらいですから」
そう言ってユートは地竜を操りながら、燃えてしまった屋敷の後を指さした。オーガヘッドの支部の屋敷跡である。
そこには公開処刑されたバーモントとその部下が首をくくられてぶら下がっているシルエットが遠くから見える。
「へえ……。私が来ると言う話だけで、悪党どもが滅びたというの?」
そうアリナは半信半疑のような顔で窓から顔を出した。
人々が勇者万歳を叫んでいるので、右手を軽く上げた。
それだけで人々は熱狂する。
「まあ、どういうことか分からないけれど、光の勇者である私ですもの。人間の悪党レベルでしたら、直接手を下さなくても解決できるのでしょう」
「はい、その通りです。アリナ様」
自信たっぷりに追従するユート。
ユートの左隣にはクラウディア。右隣にはルーシーが座っている。
(何もしてないのに、悪党が滅びるって、そんなわけあるかよ。勇者も天然すぎるわ……)
そう心の中で皮肉を言っているルーシー。
その視線の先には正装をしたこの町の領主とその娘アルティが待っている姿があった。
今日も歓迎会である。




