最高のお仕置きタイム
昨日、夜遅く帰ってきました。今日から連載再開です。
「ちっ!」
バーモントは目で合図する。ユートの後ろには暗殺者が隠れていた。バーモントが戦闘する際には必ず、暗殺者が待機している。
その暗殺者に攻撃を命じたのだ。あの吹き矢攻撃である。
マヒ毒を塗った吹き矢が当たれば、この少年の気を失わせられることは花屋で実証済み。
(気を失わせたら、即刻首を撥ねてやる)
バーモントは容赦のない男だ。
相手が子供だろうが、自分を不愉快にさせた人間は残酷に殺す。
暗殺者は忍び寄り、吹き矢をふいた。
麻痺針が一直線に飛んでいく。
それがユートの首の肉に刺さるかと思った瞬間、左手の薬指と中指でその針を挟んで止めた。
右手は樫の棒でバーモントの剣を受け止めており、視線もそっちの方。麻痺針が飛んでくるのも見ていない。
(う、嘘だろ!)
アサシンは体がすくんだ。
そして飛んできた麻痺針が眉間に突き刺さって白目をむいた。
ユートが麻痺針を投げ返したのだ。
左手首をひねって投げ返された麻痺針は、目に留まらぬ速さで暗殺者を仕留めた。
「ユート様に卑怯な攻撃は通用しないのですわ。ほんとバカ者ですわ」
ユートの代わりにクラウディアがそう言った。
この不気味な少女は気絶したアサシンを踏みつけている。
「このガキ、いい加減にしろ!」
バーモントは混乱した。
めちゃくちゃに剣を振る。
目の前の訳が分からない状況を消し去るように振り回す。
しかし、それも軽く弾かれる。樫の棒にだ。
「ちくしょう、これでも喰らえ!」
接近戦になるとバーモントには必殺技がある。
どんな手練れの冒険者も仕留められる、とっておきの技。
これでベテラン戦士や騎士を何人も葬ってきた。
「石弾!」
無詠唱の魔法攻撃である。『石弾』は第2位階の魔法。
周辺から石の成分を抽出し、無数の石つぶてを生成。それを飛ばして相手を攻撃する。
バーモントの場合は、その石つぶてが、らせん状の鋲の形になり、至近距離からなら相手の体を貫く。
こういう体制で使うと絶対に避けられない。ほとんどが頭を打ちぬかれて絶命する。これまではそうだった。これまでは。
バーモントは信じられない光景を目にする。
ユートは飛ばした石を手のひらで受け止めたのだ。
「な、なんなんだ、貴様は~っ」
そう叫んだ。そしてその瞬間、両手足がぐしゃりとひしゃげたのが分かった。ユートが樫の棒で叩いたのだ。
一撃で両方の大腿骨及び上腕骨が折れる。
バーモントはそのまま廊下に倒れる。
あまりに突然の衝撃に当初は痛みは感じなかったが、徐々に激痛が脳に飛び込んでくる。
「ぐぎゃあああああああっ~」
こんな痛みは初めてである。目にちかちかと光が飛び込んでくる。
「あなたはアリナ様のことを侮辱しました。罰を受けてもらいます」
倒れているバーモントをひどく冷たい目で見降ろすユート。
バーモントは恐怖に顔がひきつる。
あまりにも少年が淡々としているからだ。
「ば、ばかを言うな。もう罰は受けているじゃないか!」
両手足が折れて仰向けに倒れている。
これが罰でなくて何なのか。
それよりも、そんな年端もゆかない少年の前に、自分が何もできないことが納得できない。
「反省もしてないようですね」
「す、する。反省をする……」
バーモントはそう懇願した。もうプライドとかはかなぐり捨てる。
バーモントは卑劣な男であった。こうやって油断させ、最後には復讐を果たす。
昔、自分がまだ弱かった時、こうやって許しを請い、命びろいをした後、再度、卑劣な手で相手に復讐したことがあった。
『倍返し』と呼んでいた。
(そうだ、このガキに倍返しだ。ここは生き延びる。生き延びて倍返しだ。このガキの家族を殺す。どこに逃げても殺す。このガキの見ている前で……)
「ほい!」
ユートは樫の棒をバーモントの口に突き刺した。
歯が折れて喉が潰れる。
「うごごご……」
「これはアリナ様をしょんべんくさいなどと言った罪」
そして、今度は頭のてっぺんめがけて突き刺す。
「ぐあああああっ……」
髪の毛が頭の中央から皮ごとはがれた。
「これはアリナ様をブスと言った罪……そして……」
「や……ひゃみてくれ……」
バーモントは潰れた喉からやっと声を絞り出す。この少年には人間らしさを感じない。魔人のような冷徹さである。
「た、頼む……そこだけは……勘弁してくらはい……」
バーモントは懇願した。ユートの次に狙いが自分の下半身だったからだ。
「これはアリナ様を弄ぶなどと、下品なことを言った罪」
ぐしゃっ……。1つ潰れた。
もうバーモントは声すら出ない。
「ユート様、それくらいにするのがよいですわ。この屋敷には国中のオーガヘッドの幹部の連中が集まっているですの。全部消すには丁度よいのですわ」
「そうですね……。汚物は消毒しましょう。アリナ様に醜いものを見せるわけにはいきません」
くすくすと笑うクラウディア。今頃はホールのパーティ会場で騒ぎが起きていることであろう。




