贈られたアイテム
不本意ながら、ついでと言われてルーシーも友達認定されてしまった。
突っ込みを入れつつ、ルーシーはこの展開にまた違和感を覚える。
(ユートは突っ込まないけど、300年前の勇者一行に付き従った大魔導士が12歳の子供というのはどうなんだ。そしてこの馴れ馴れしい態度……。)
どうも怪しい。それにクラウディアはこの300年の間。自分に呪いをかけた大魔王と見捨てた勇者を恨み続けていたと言っていた。
その大魔王は倒され、勇者も寿命で死んだ。恨む対象が消えたから、恩人になるユートに押しかけ女房宣言……いや、今は押しかけ友達になってしまったが、そんなにちょろい奴には思えない。
(これは何かあると思った方がいいな。こいつ、300年以上生きていただけあって、強かだぜ……)
そうルーシーは思ったが、クラウディアがユートに絡むのは許容した。クラウディアも大魔導士で人間を超越した力をもつ。ユートと同じで見た目子どもだけど、敵対してはいけない人物だ。
そういう奴同士でつるむ方がルーシーのような一般人に迷惑がかからない。
「何なら、私も勇者のメイドになるのですわ。その隣の女もどうせ同じでしょう」
そうクラウディアはルーシーを睨みつけた。どうやら、ルーシーをライバル視しているようだが、ルーシーとしてはたまったものではない。
300年も生きた元吸血鬼で大魔導士。今も強力な魔法がバンバン使える奴と何か争う気持ちはこれっぽちもない。
それにルーシーにとってユートは恋愛対象でもなんでもない。あえて言うなら恐怖の対象。とりあえず傍にいればボディガード代わりになっているが、いつ巻き添えになってもおかしくはない。
クラウディアの申し出にユートも賛成した。アリナの世話は自分一人で十分であるが、パーティ全体となるとかなり忙しい。ルーシーが加入して随分と楽になったから、クラウディアが加入すれば、もっと楽になる。その分、アリナにきめ細かく仕えることができると考えた。
「分かりました。アリナ様に頼んでみます。これからよろしくクラウディアさん」
「クラウでいいです。ユート様」
さりげなく「あなた様」から名前呼びをするクラウディア。この女、旦那は「様」付けで呼ぶ貞淑な妻を演じたいようだとルーシーは心の中で毒づいた。
「それじゃあ、クラウ。君の持っているエリクサーを分けてください」
ユートはそう頼んだ。いろいろあったが、ここへ来た目的は勇者アリナを完全復活させる魔法の薬『エリクサー』を手に入れることだ。
「はい、ユート様。エリクサーをお渡しするのですわ。一緒に来てくださいます?」
そういうとクラウディアは古城の宝物庫へとユートとルーシーを案内した。
宝物庫には金貨が山ほど積まれ、そしてところどころに貴重な魔法のアイテムが拝見される。
「すげえ……これだけあれば超金持ちじゃん!」
ルーシーは大興奮するが、くすねることは断念した。ユートもクラウディアも絶対見逃さないし、罰を与えられたら絶対に死ぬ。この2人の能力は人間を超越している。そして考え方も倫理観も少しおかしい。
「はい、これですわ」
宝の山からクラウディアは赤い液体の入ったガラス瓶を取り出した。
「これがエリクサーですか?」
ユートは目を輝かせた。これがあれば勇者アリナは完全復活する。任務はとりあえず達成だ。
「材料があれば私が調合することもできるのですわ。私は大魔導士でもあり、薬師でもあるのですから」
大魔導士であり、薬の調合師でもあるクラウディアはそう自慢した。300年の間暇だったので、薬の研究も随分してきた。別の部屋には薬の材料となる薬草や鉱物がたくさん保管してある。
「ユート様。出会えた記念にプレゼントを差し上げるのですわ」
そういうとクラウディアは、ごそごそと宝の山から小さな箱を2つ見つけ出した。この山の中からよく見つけられたものだとルーシーは感心する。
しかもこの女。鑑定知識もある。
「はい、これですわ」
箱を開けると2つとも腕輪であった。
(わっ、おも……。最初のプレゼントがアクセサリーかよ)
ルーシーは重い奴だとクラウディアを見たが、本人は全く気にしていない。腕輪自体1つは金、もう1つは銀製のように見えた。
(売れば金の方は高値で売れそうだ。装飾の見事さからすれば金貨100枚は固いぞ。銀の方はせいぜい金貨1枚だろうけど)
そうルーシーは値踏みした。銀の腕輪は金属の価値からすればそんなにないが、美術品としての価値が高そうだ。
しかし、この腕輪は美術品としての価値もあるが、その秘められた能力の方に価値があった。
「金の方は制御の魔法がかかっています。回せるようになっていますでしょ」
そうクラウディアが説明する。確かによく見ると表面が外側と内側に分かれ、内側がカチカチと回せる。
「回すと数字のあるところで止まるのですわ」
確かに「Ⅰ」「Ⅱ」「Ⅲ」「∞」のマークがある。
「これは攻撃力を調整する魔法具ですわ。Ⅰにすると腕っぷしの強い喧嘩自慢の大人レベルの強さ。Ⅱだとよく訓練された兵士や熟練冒険者レベルの強さ。Ⅲは超人的な強さ。そして∞はリミット解除となるのですわ。普段はⅠにしておくとよいと思うのですわ」
そうクラウは説明した。これは今のユートにはとても役立つアイテムだとルーシーは思った。ユートが仮に何気なしに人をぶん殴ったら、間違いなく殴ら
れた奴は死んでしまうからだ。
「へええ……これはいいアイテムですね。弱い僕でもⅠにすれば大人並みの強さになれるということですね」
さすがユート。力が倍増するアイテムだと勘違いしている。これは制御するアイテムだから、仮に弱い奴が付けても強くはならない。
とんでもなく強いユートだからこそ意味のあるマジックアイテムなのだ。
「そしてこっちの銀の腕輪は変身ができるアイテムなのですわ」
そう言ってクラウはユートの左手首に着けたブレスレットをカチッと回す。これも右手首の金の腕輪と同じ構造である。
「おっ!」
一瞬でユートの服装が変わった。着ぐるみである。真っ白の毛でもこもこ。頭からずっぽりと被るお面はウサギである。
「これを被るとウサギの着ぐるみを着て、姿を偽ることができるのですわ」
「へえ、かわいいですね」
ユートは広間の姿見で自分の姿を見る。この姿ならアリナを陰でサポートできる。冒険中はクエストベースで待機を命じられているので、ユートはついて行くことができない。
この姿なら自分だとばれないだろう。
(これじゃ、無敵のウサギ仮面の完成だろうが。これから人助けする謎のウサギ仮面の噂が国中に広がるでしょ!)
ルーシーはそう心の中で突っ込んだ。
しかし、クラウがユートにこんなアイテムを見繕ったのはなぜかと考えた。
(この女、だてに300年生きちゃいないな……。ユートの立場と性格を完全に把握している……)
ユートが無自覚最強だと見抜いたのであろう。なぜ、そうなっているのかということが疑問に感じるのが普通だが、それはスルーしている。
(だけど……何か引っかかるんだよな)




