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金烏の花嫁  作者: 朱音ゆうひ@8/5『桜の嫁入り』コミカライズ連載スタート
4章、墨色の蝶

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35/42

35、目覚め

「あ……」

 視界には、見慣れた自室の天井がある。


「葵さん!」


 必死な声がして視線を横に向けると、丙が葵の手を握り、顔を覗き込んでいた。

  

「丙様」


 葵の呟きにうなずき、丙は葵を抱きしめた。


「君が目を覚まさなかったら、どうしようかと……」 


 声を震わせる彼を見て、葵の胸がじわりと熱を持つ。


 ——この人は私を心配してくれて、私を見てくれて、私を抱きしめてくれるんだ。

 私は今、この人の腕の中に居場所があるんだな。


 この居場所を、温もりを、失うことを考えるだけで恐ろしくなる。

 きっと、これが恋なのだろう。


 それは、楽しくて幸せで、甘くて——少しだけ、怖い気がした。


 葵は震える彼の背に、そっと腕を回した。

 

 そのとき、葵の視界の隅にゆらりと揺れる白い人影が見えた。

 人影は美しい女性の姿をしていて、目が合うと一瞬だけ微笑む。

 そして、空気に溶けるように儚く消えた。

 

 お母様……。

 

 自分を守ってくれていた力は、墨染の王との戦いで尽きてしまったのだろう。

 


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