第77話
夜――。
弘毅は病室のベッドで眠っていた。
その時だった。
ズキン――。
まるで何か硬いもので頭を殴られたような激痛が走った。
「うっ……!」
弘毅は思わず布団を頭から被り、身体を丸める。
頭の奥が焼けつくように痛い。
すると、どこからともなく声が聞こえてきた。
「弘毅……」
「弘毅……」
「思い出して……」
それは遠くから響いてくるような、かすかな女性の声だった。
『だ、誰だ……?』
『何を思い出せっていうんだ……?』
弘毅は苦痛に耐えながら顔を上げた。
やがて痛みが少し和らぎ、恐る恐る布団の中から這い出す。
すると――。
ベッドの横に、ナース服姿の奈津が立っていた。
「どうしたの?」
「眠れないの?」
奈津は優しく微笑んだ。
「あ、頭が……割れそうなくらい痛くて……」
弘毅が苦しそうに答える。
だが奈津は驚く様子もなく、
「そう。」
「じゃあ、お薬を持ってきますね。」
と穏やかな口調で言った。
その反応に、弘毅は違和感を覚えた。
(頭が割れそうなくらい痛いって言ったんだぞ……?)
(どうしてそんなに平然としているんだ……?)
奈津が病室を出ようとした時、弘毅は思わず呼び止めた。
「看護師さん。」
奈津が足を止める。
「僕は……どんな事故に遭ったんですか?」
「どうしてここにいるんですか?」
奈津は背中を向けたまま立ち尽くした。
数秒の沈黙が流れる。
やがて奈津は何も答えないまま、静かに病室を出て行った。
ガチャ――。
病室の扉が閉まる音だけが、不気味なほど大きく響いた。
弘毅は一人、薄暗い病室に取り残された。
そして確信する。
この病院には、何か隠されている――。




