第74話
弘毅は、狭間の言葉の意味を必死に考えた。
――MZ1。
それが誰を指すのか、まったくわからない。
その時だった。
ズキン――。
突然、頭を激しい痛みが貫いた。
「ぐっ……!」
弘毅は頭を押さえ、その場に膝をつく。
次の瞬間、視界が大きく揺らぎ、意識は過去の記憶へと引きずり込まれていった。
***
――俺は……どこだ?
弘毅――いや、駿一は担架に横たえられ、薄暗い天井をぼんやりと見つめていた。
全身は焼けつくように痛み、指一本動かすこともできない。
黒ずくめの男たちが無言のまま担架を押し、どこかへ運んでいく。
隣には、同じように担架へ寝かされた彩香の姿があった。
『どうして……俺はこんな所にいるんだ?』
何か大きな事故に巻き込まれたことだけは覚えている。
だが、それが何だったのかは思い出せない。
霞のかかったように記憶だけが抜け落ちていた。
その時、彩香がゆっくりと顔をこちらへ向けた。
言葉は何もない。
それでも、不安を隠すように小さく微笑んだ。
その微笑みに、駿一もわずかに頷き返した。
やがて二人の担架は別々の通路へ進み始める。
「彩香……!」
声を掛けようとしても、声は出なかった。
彩香の姿はゆっくりと遠ざかり、やがて見えなくなる。
駿一が運び込まれた先には、白い手術着を着た数人の男たちが待っていた。
そこは、まるで秘密裏に造られた手術室のような部屋だった。




