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第73話
弘毅は彩香の想いを胸に、一人でマスターコンピューターの部屋へ向かった。
偽りの加奈子と、操られた奈津の目をかいくぐり、ようやく最深部へとたどり着く。
彩香が命を懸けて停止させたセキュリティのおかげで、重々しい扉は音もなく開いた。
弘毅はゆっくりと部屋の中へ足を踏み入れた。
そこは、これまでの無機質な研究施設とは異なり、異様な静寂に包まれていた。
部屋の中央には、強化ガラスでできた二本の巨大な円柱が並んでいる。
その内部には――
狭間と加奈子の姿があった。
「ど、どうして……?」
弘毅は目の前の光景に息をのんだ。
二人はまるで眠っているかのように目を閉じ、無数のコードに全身を繋がれている。
その時だった。
ゆっくりと狭間の瞼が開いた。
「MZ1よ……。
よくぞ、ここまでたどり着いたな……」
静かな部屋に、低く響く狭間の声がこだました。
「MZ1……?」
弘毅は思わず辺りを見回した。
だが、この部屋にいるのは自分しかいない。
「誰のことを言っているんだ……?」
弘毅が戸惑いを隠せずに尋ねると、狭間はわずかに寂しそうな笑みを浮かべた。
「……そうか。
まだ何も思い出してはおらぬのか。」
その言葉に、弘毅はただ立ち尽くすしかなかった。




