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第72話
「ど、どいてくれ!……
そいつを壊さないと!」
弘毅は彩香をそっと脇へ退かそうとし、アンドロイドの駿一へ近づいた。
「ダメ! やめて!……」
彩香は駿一を守るように、その身体へ覆いかぶさった。
その姿を見た弘毅は、思わず足を止めた。
もう駿一に手を掛けることができなかった。
彩香は駿一を優しく抱き締めるようにしながら、小さく囁いた。
「駿一……もう、いいの。
一緒に……休みましょう……」
彩香はそっと駿一の首の後ろへ手を回した。
次の瞬間――
彩香の掌から細いコードが静かに伸び、駿一の首の後ろへと接続される。
淡い光が二人を包み込み、静かな電子音が部屋に響いた。
ピッ――。
ゆっくりと駿一の瞳から光が消えていく。
それと同時に、彩香の身体からも力が抜けた。
「ごめんなさい……弘毅さん……」
彩香は最後に弘毅へ微笑みかけた。
「私は……もう、一緒には行けないわ……」
「後は……お願い……」
そう言い残すと、彩香の瞳も静かに閉じられた。
駿一に寄り添うように彩香の身体は動きを止め、二人はまるで長い眠りについた恋人のように
寄り添っていた。
「彩香……」
弘毅はその場から動くことができなかった。
胸の奥に、言葉にならない痛みだけが静かに広がっていった。




