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第71話
彩香は悲しげに目を伏せ、小さく呟いた。
「……ごめんなさい。」
その声は、駿一へ向けた謝罪なのか、それとも自分自身へのものなのか、弘毅にはわからなかった。
しばらく静寂が流れる。
弘毅は彩香の気持ちを察しながらも、静かに口を開いた。
「悪いけど……時間がない。」
「このままじゃ、みんな助からない。」
彩香はハッと顔を上げた。
そして、ゆっくりと駿一の前まで歩み寄る。
「ねぇ……駿一。」
震える声だった。
「お願い。」
「マスターコンピューターを止めて。」
駿一は無表情のまま彩香を見つめる。
数秒の沈黙。
そして静かに答えた。
「……それは、できない。」
「私は彼――マスターコンピューターを守るために存在している。」
その言葉はあまりにも機械的で、かつての駿一の面影を感じさせなかった。
彩香は力なく首を振る。
「そんな……。」
その場に崩れ落ちるように座り込むと、涙が頬を伝った。
弘毅はその姿を見つめ、苦しそうに拳を握り締める。
「……仕方ない。」
静かに呟く。
「壊すしかない。」
そう言って一歩踏み出した、その瞬間――
「ダメ!!」
彩香が勢いよく立ち上がり、弘毅の前へ飛び出した。
両手を広げ、駿一をかばうように立ちはだかる。
「この人だけは……傷つけないで!」
彩香の叫びが、静まり返った部屋に響き渡った。




