第69話
「さて……これから、どうする?」
弘毅が頭を抱えていると、不意に彩香が何かを思い出したように顔を上げた。
「……そうだ!」
そう叫ぶなり、彩香は廊下を駆け出した。
「お、おい! どうしたんだ!?」
弘毅も慌てて、その後を追う。
彩香が向かった先は、マスターコンピューター室とは反対側にある、ひっそりとした一区画だった。
誰も近づかないのか、通路には不気味な静けさが漂っている。
彩香は迷うことなく、一枚の重い扉の前で立ち止まった。
「ここよ……」
そう呟くと、固く閉ざされたドアに手を掛ける。
ギギギ……
鈍い音を立てて扉がゆっくりと開いた。
彩香は弘毅を待つことなく、そのまま部屋の中へ入っていく。
「ちょ、ちょっと待って!」
弘毅も後を追って部屋へ飛び込んだ。
その瞬間――
パッ……
薄暗い照明が一つ、また一つと灯り始める。
ぼんやりと浮かび上がった部屋の中央には、一体の人影が立っていた。
いや――
立ったまま、まったく動かない。
「なっ……!」
弘毅は思わず息を呑む。
そこにいたのは、自分と瓜二つの顔を持つアンドロイド――駿一だった。
しかし、その瞳には光がなく、まるで電源が切れた人形のように微動だにしない。
彩香はその姿を見つめ、小さく呟いた。
「……本物は、この人よ。」
弘毅は隣に立ち、動かない駿一を見上げた。
「壊れている……のか?」
彩香は静かに首を横へ振る。
その表情はどこか悲しげだった。
「違うの……。」
「これは――」
彩香はゆっくりと駿一へ手を伸ばした。
「すべての始まりなの。」




