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第68話

 弘毅は彩香の話を聞きながら、不思議そうに首を傾げた。


「でも……どうして国の研究施設が、こんなことになったんだ?」


 彩香は静かに目を伏せる。


「詳しいことは、私にもわからないわ。」


 少し間を置いてから、続けた。


「でも、マスターコンピューターの記録には残っていた。」


「記録?」


「施設は、外部から侵入した未知のウイルスに感染した――そう書かれていたの。」


「ウイルス……?」


 弘毅は思わず眉をひそめた。


 彩香はゆっくりと頷く。


「最初は誰も異変に気づかなかった。」


「でも、そのウイルスは少しずつ施設全体へ広がっていったの。」


「コンピューターも、機械も……そして、人間までも。」


 その言葉に、弘毅の表情が強張る。


「人間まで感染したのか……?」


「ええ。」


 彩香は苦しそうに頷いた。


「気づいた時には、もう手遅れだった。」


 重苦しい沈黙が二人の間に流れる。


 やがて弘毅が口を開いた。


「でも、そのウイルスは、どうやって施設に入り込んだんだ?」


 彩香はゆっくりと首を横に振る。


「……それだけは、わからない。」


「記録にも残っていないの。」


「誰が持ち込んだのか。」


「事故だったのか。」


「それとも、故意だったのか――。」


 彩香の最後の言葉が、静まり返った廊下に重く響いた。

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