第67話
「……ダメ。」
彩香は小さく首を振った。
「わからない……」
壁へ差し込んでいたコードをゆっくりと引き抜くと、伸びていたケーブルは
音もなく腕の中へと吸い込まれていく。
弘毅はその光景を呆然と見つめていた。
「き、君は……」
言葉が続かなかった。
彩香はそんな弘毅の視線を受け止めると、どこか寂しそうに微笑んだ。
「そう……。」
そして小さく息をつく。
「私たちも、ここへ連れて来られたの。」
「えっ……?」
「そして、人間じゃなくなった。」
彩香は自分の腕を見つめた。
「こんな身体に、造り替えられたの。」
その横顔には諦めにも似た悲しみが浮かんでいた。
弘毅は思わず息を呑む。
「私たち……って?」
彩香は静かに頷いた。
「私だけじゃない。」
「私も、駿一も……そして他にも何人も。」
「みんな、あなたや奈津さんと同じように、この施設へ連れて来られた。」
弘毅の背筋に冷たいものが走る。
「じゃあ……ここは一体、何なんだ?」
彩香は首を横に振った。
「詳しいことは私にもわからない。」
少し考え込むように目を伏せる。
「でも、一つだけ確かなことがある。」
弘毅は息を呑んだ。
「ここは、もともと国が管理していた研究施設だったみたい。」
「国が……?」
弘毅は思わず声を漏らした。
国家が関わる施設。
その事実は、この出来事が単なる犯罪では済まされないことを意味していた。




