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第60話

 ブゥーン――。


 低いうなり声のような音が施設全体に響き渡った。


 次の瞬間、弘毅たちのいる部屋の照明が一斉に消え、辺りは闇に包まれた。


「な、何だ!?」


 弘毅が身構えた、その時だった。


 『サブ電源へ切り替えます』


 無機質な機械音声が施設内に響き渡る。


 直後、照明が再び点灯し、部屋は何事もなかったかのように明るさを取り戻した。


「今のは……?」


 弘毅は周囲を見回しながら呟いた。


 彩香は冷静な表情のまま答える。


「マスターコンピューターが、自動的に予備電源へ切り替えたの。これくらいは想定内よ」


 そして表情を引き締める。


「でも、本当の勝負はここから」


 彩香はそう言うと、サブ電源室へ向かって走り出した。


 弘毅と奈津も、そのあとを追う。


 しばらく進むと、巨大な機械が並ぶ部屋へとたどり着いた。


 不思議なことに、そこには見張りの姿は一人もなかった。


「警備がいない……?」


 弘毅は警戒しながら辺りを見渡す。


 静まり返った空間が、かえって不気味だった。


「今のうちよ」


 彩香が小さく促す。


 弘毅は頷き、二基並んだサブ電源装置へ近づいた。


「これを壊せばいいんだな」


 装置に手を伸ばした――その瞬間。


 『やめなさい……弘毅』


 施設中に響く機械音声とは違う、人間の声が聞こえた。


 その声は、どこか悲しげで、優しかった。


 弘毅は思わず動きを止める。


「……誰だ?」

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