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第53話
弘毅は俊敏な動きで、手術室にいた手術服姿の男たちを次々と倒した。
男たちが床に倒れ込んだのを確認すると、弘毅はすぐに奈津のもとへ駆け寄る。
「大丈夫か?……」
奈津を拘束していたベルトを外し、手術台からそっと降ろした。
身体を震わせながら弘毅にしがみついた奈津は、涙ぐんだまま周囲を見回し、
「な、何なの……ここは?……」
と震える声で訊いた。
弘毅は首を横に振る。
「さあ……俺にもわからない。でも、ここにいたら危険だ。早く逃げよう!」
そう言うと、弘毅は奈津の手をしっかり握り、手術室を飛び出した。
二人は薄暗い廊下を必死に駆け抜ける。
しかし、その建物は迷路のように入り組み、どれだけ走っても出口らしき場所は見当たらなかった。
何度も角を曲がり、長い廊下を抜けても景色はほとんど変わらない。
「ねぇ……少し休まない?……」
息を切らした奈津が、その場で足を止めた。
弘毅も奈津の疲れ切った表情を見ると、小さく頷いた。
「……そうだな。少しだけ休もう。」
二人は壁にもたれ掛かり、荒い息を整える。
だが、その間も弘毅の胸騒ぎは消えなかった。
――誰かに見られている。
そんな得体の知れない視線を、弘毅はずっと感じ続けていた。




