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第52話

弘毅は拘束されていた部屋から、どうにか抜け出した。


 外へ出ると、そこは病院の廊下を思わせる、薄暗く入り組んだ通路だった。


 「た……助けて……」


 微かに聞こえる奈津の声が、静まり返った廊下に響く。


 怖かった。


 だが、その声を聞いた瞬間、弘毅の身体は自然と前へ動いていた。


 声を頼りに、弘毅は廊下を駆け抜ける。


 しかし、その直後だった。


 白衣を着た研究者らしき男たちが数人、通路の奥から飛び出してきた。


 「待ちなさい!」


 男たちは弘毅の前に立ちはだかった。


 だが、弘毅は一切スピードを緩めなかった。


 一人目の腕を払い、腹部へ鋭い一撃。


 続けて二人目の足を払い倒し、三人目の胸元へ肘打ちを叩き込む。


 男たちは悲鳴を上げる間もなく、その場へ崩れ落ちた。


 『なんなんだ……俺は……』


 自分でも信じられない動きだった。


 だが、それを考えている暇はない。


 「助けて……」


 再び奈津の声が聞こえた。


 弘毅は声を追い、一つの手術室らしき部屋の前へたどり着く。


 勢いよくドアを開け放つと、そこには手術台へ拘束された奈津の姿があった。


 数人の男たちが手術着に身を包み、メスや医療器具を手にして奈津を囲んでいる。


 「お前たち……奈津に何をするつもりだ!」


 弘毅が怒鳴る。


 男たちはゆっくりと振り返り、不気味な笑みを浮かべた。


 「フッ……逃げ出したか。」


 その一人が、冷たい目で弘毅を見据える。


 「うるさい……失敗作が。」


 その言葉と同時に、男たちは手術器具を武器のように構え、一斉に弘毅へ襲いかかってきた。

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