第50話
混乱したまま立ち尽くしている弘毅の前に、一編成の新幹線がゆっくりとホームへ滑り込んできた。
未来的な流線形の車体。
静かなモーター音。
その光景を目にした瞬間、弘毅の胸がざわつく。
車両のドアが開き、中から旧式のロボットを思わせる車掌が姿を現した。
ロボット車掌は柔らかな笑みを浮かべると、機械的でありながらどこか温かみのある声で告げる。
「まもなく発車いたします。ご乗車のお客様は、お急ぎください」
――その言葉だ。
弘毅の全身に鳥肌が立った。
聞いたことがある。
いや、聞いたどころではない。
この言葉を、この場所で、この車掌から聞いた。
弘毅は震える視線を新幹線へ向ける。
車体には、銀色の文字で名前が刻まれていた。
ギャラクシア。
「……やっぱりだ」
思わず声が漏れる。
ここは夢ではない。
幻覚でもない。
自分は、もう一度この場所へ戻ってきたのだ。
「どうして……」
時間が巻き戻ったのか。
なぜ自分だけが、この出来事を覚えているのか。
答えは何ひとつ分からない。
ロボット車掌が再び弘毅へ声をかける。
「お客様。ご乗車にならないのですか?」
弘毅は吸い寄せられるように一歩踏み出した。
その瞬間――。
「助けて!」
少女の悲鳴が、どこからともなく響いた。
弘毅は足を止める。
「……!」
この声は、前回にはなかった。
何かが違う。
何かが変わっている。
弘毅はギャラクシアへ乗るのをやめ、その場に立ち尽くした。
次の瞬間だった。
世界が音を立ててひび割れる。
ホームが砕け、空が歪み、景色そのものがガラスのように崩れ始めた。
弘毅の視界は白く染まり――。
現実の世界へと引き戻されていった。




