第49話
弘毅の表情がどこか強張っていることに気づいた奈津は、不安そうに声をかけた。
「ねえ……大丈夫? 私が運転しようか?」
弘毅はしばらく黙っていたが、小さく頷いた。
「……うん。頼む」
二人は車を降り、運転席と助手席を入れ替わる。
奈津はシートベルトを締めると、深呼吸を一つした。
「じゃあ、行くね」
キーを回し、エンジンを始動させる。
――次の瞬間だった。
ドォォォンッ!!
凄まじい爆発音が大気を震わせた。
車体は炎に包まれ、衝撃波とともに宙へと吹き飛ぶ。
激しい爆風が周囲をのみ込み、ガラス片や金属片が雨のように飛び散った。
弘毅は何が起こったのか理解する間もなく、意識が暗闇へと引きずり込まれていく。
――遠くで誰かの声が聞こえる。
『……あれ?』
ゆっくりと目を開くと、自分はどこかの駅のホームに立っていた。
静まり返ったホーム。
見覚えのある景色。
『ここは……』
弘毅は辺りを見回す。
確かに、この場所を知っている。
いや――。
一度、この光景を経験している。
しかし、それがいつだったのか、どうしても思い出せない。
そのとき、少し離れた場所から男たちの話し声が聞こえてきた。
「……これは駄目だな」
低い声だった。
弘毅が声のする方へ視線を向けると――。
そこで意識は再び揺らぎ、景色がゆっくりと滲み始めた。




