第41話
息も絶え絶えの狭間は、血の滲む唇を震わせながら言った。
「は、早く……ここから逃げなさい……」
「先生!」
弘毅は狭間の肩を支える。
「何があったんですか!?」
狭間は苦しそうに息を吸った。
「奴らが……来た……」
「奴ら?」
弘毅が聞き返した瞬間だった。
狭間の身体から力が抜けた。
「あ……」
その目から光が消える。
「先生……?」
返事はなかった。
弘毅は呆然と狭間を見つめた。
つい数分前まで話していた人が、もう二度と話さない。
その現実を受け入れられなかった。
『奴らって……誰なんだ?』
頭の中が混乱する。
だが、その時――。
「きゃあああっ!」
鋭い悲鳴が外から響いた。
加奈子の声だった。
弘毅はハッと顔を上げる。
次の瞬間には診療室を飛び出していた。
外へ出ると、そこには恐ろしい光景が広がっていた。
加奈子と愛華が黒ずくめの男たちに追い詰められていたのだ。
二人とも恐怖で顔を青ざめさせている。
男たちは拳銃を手にしていた。
『まずい!』
考えるより先に身体が動いた。
弘毅は拳銃を構える。
なぜ構え方を知っているのか、自分でも分からなかった。
だが、その手は少しも震えていない。
まるで何度も訓練したことがあるかのようだった。
「二人とも!」
弘毅は叫ぶ。
「しゃがんで!」
加奈子と愛華は反射的に身を伏せた。
その瞬間――。
パァン!
乾いた銃声が響く。
弘毅の放った銃弾は正確に男の肩を撃ち抜いた。
続けざまにもう一発。
パァン!
もう一人の男も倒れる。
黒ずくめの男たちは地面へ崩れ落ちた。
辺りは静まり返る。
弘毅は拳銃を握ったまま立ち尽くした。
『俺は……どうしてこんなことができるんだ?』
倒れた男たちを見つめながら、自分自身が一番驚いていた。




