第40話
「本当に駿一にそっくりね……」
愛華は感心したように弘毅の顔を見つめた。
そして、ふと思い出したように尋ねる。
「そういえば、あなたの名前は?」
弘毅は少し戸惑いながら答えた。
「こ、弘毅です」
その瞬間だった。
――パァン!
乾いた破裂音が家中に響き渡った。
一瞬、誰も動けなかった。
「な、何!?」
愛華が顔を青ざめさせる。
診療所の方角から聞こえた銃声だった。
その途端、弘毅の表情が変わった。
今までの戸惑いが消え、鋭い眼光が宿る。
まるで別人のようだった。
「愛華さん!」
「え?」
「加奈子さんを連れて、すぐにここから逃げてください!」
低く、しかし有無を言わせぬ声だった。
愛華は思わず息を呑む。
「で、でも……」
「急いで!」
弘毅は叫んだ。
「時間がない!」
その迫力に押され、愛華は思わず頷いた。
「わ、分かった!」
愛華は慌てて加奈子のいる方へ駆け出した。
それを見届けると、弘毅は強く拳を握った。
胸の奥がざわつく。
何かが起きている。
そして自分は、それに対処する方法を知っている気がした。
『何なんだ……この感覚は……』
考える時間はなかった。
弘毅は駿一の部屋へ駆け込む。
机の引き出しを開けると、そこには昨夜見つけた拳銃があった。
躊躇なく手に取る。
その動作があまりにも自然だった。
まるで何度も扱ったことがあるかのように。
『どうして俺は……』
疑問を抱きながらも、身体は勝手に動いていた。
弘毅は拳銃を握り締め、診療所へと走った。
診療室の扉を開けた瞬間、血の匂いが鼻を突いた。
「っ!」
そこには信じられない光景が広がっていた。
床に倒れている狭間。
胸元は血で赤く染まっている。
そして、そのすぐ近くには黒ずくめの男が倒れていた。
男の胸には手術用のメスが深々と突き刺さっている。
診療室は静まり返っていた。
弘毅は急いで狭間の傍へ駆け寄る。
「先生!」
狭間はまだ息があった。
苦しそうに呼吸を繰り返している。
「どうしたんですか!?」
弘毅は狭間の身体を支えながら叫んだ。
「何があったんですか!?」




