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第4話

 ――ガタンッ。


 小さな衝撃と共に、弘毅は目を覚ました。


 ぼやけた視界の向こうで、車内灯が静かに揺れている。


 一瞬、自分が何処にいるのかわからなかった。


 だが、ゆっくりと意識が戻るにつれ、記憶が繋がっていく。


 ギャラクシア。


 時間旅行。


 2008年。


 弘毅は重い身体を起こし、ゆっくり周囲を見回した。


 車内は静かだった。


 乗客たちはいつの間にか目を覚ましていたが、誰も言葉を発しない。


 ただ黙って、窓の外を見つめている。


 弘毅もつられるように窓へ目を向けた。


 そして、息を呑む。


 そこには夜の街が広がっていた。


 無数のビル群。


 道路を走る車のライト。


 巨大な広告モニター。


 遠くで瞬く赤い航空灯。


 未来都市ほど洗練されてはいない。


 けれど、その景色には確かな“人間の熱”があった。


 弘毅は知らず知らずのうちに窓へ手を伸ばしていた。


 未来では感じなかったものが、そこにはあった。


 雑多な光。


 曖昧な騒音。


 生きている街の空気。


『まもなく、2008年・東京駅に到着いたします』


 車内アナウンスが静かに流れる。


『お忘れ物のないよう、お気を付けください』


 その時だった。


 弘毅の胸の奥に、小さな痛みが走る。


 東京駅。


 その名前を聞いた瞬間、脳裏に何かが浮かびかけた。


 夕暮れのホーム。


 誰かの後ろ姿。


 風に揺れる長い髪。


 だが、次の瞬間には消えてしまう。


「……誰だ」


 弘毅は無意識に呟いていた。


 思い出せそうで、思い出せない。


 その感覚が、妙に苦しかった。


 やがてギャラクシアはゆっくり速度を落としていく。


 窓の外を流れる光も次第に遅くなる。


 そして――。


 巨大なプラットホームへ、静かに滑り込んだ。


 “プシュー……”という音と共にドアが開く。


 その瞬間、ざわめきが車内へ流れ込んできた。


 人の声。


 足音。


 アナウンス。


 笑い声。


 弘毅は思わず目を見開いた。


 未来の静まり返った駅とは、まるで違う。


 ホームには大勢の人々がいた。


 スーツ姿の会社員。


 旅行客。


 学生たち。


 誰もが慌ただしく行き交っている。


 その雑踏を見た瞬間、弘毅の胸が妙に締め付けられた。


 ――懐かしい。


 なぜか、そう思った。


 けれど、自分が何を懐かしんでいるのかはわからない。


 乗客たちが次々と車両を降りていく。


 弘毅も銀色のチケットを握り締めたまま、ゆっくり立ち上がった。


 2008年。


 この時代に、自分は何を探しに来たのだろう。


 その答えは、まだ何ひとつわからなかった。

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