表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
36/74

第36話

その時だった。


 再び、弘毅の頭に鋭い痛みが走った。


 ズキッ――。


 視界がぐらりと揺れる。


 思わず額を押さえた瞬間、脳裏に一つの映像が浮かび上がった。


 見知らぬ青年。


 いや――違う。


 それは弘毅自身によく似た顔立ちの青年だった。


 駿一だ。


 その駿一が無表情のまま拳銃を手にしている。


 慣れた手つきだった。


 まるで長年扱ってきたかのように。


 『何だ……この映像は……』


 弘毅がそう思った瞬間、映像は霧のように消えた。


 頭痛も嘘のように治まる。


 静まり返った部屋の中で、弘毅は荒い呼吸を繰り返した。


 『今のは何だったんだ……』


 ただの幻覚とは思えない。


 妙な現実感があった。


 弘毅は無意識に机へ近づいた。


 そして、駿一が使っていた机の引き出しに手を掛ける。


 なぜそこを開けようと思ったのか、自分でもわからなかった。


 カチャ――。


 引き出しが開く。


 次の瞬間。


 弘毅の全身が硬直した。


 『えっ……』


 そこには拳銃が置かれていた。


 しかも一丁ではない。


 丁寧に整頓された状態で、複数の拳銃が並んでいる。


 まるでコレクションのように。


 弘毅は慌てて引き出しを閉じた。


 心臓が激しく鳴る。


 『嘘だろ……』


 額から汗が流れ落ちた。


 今見た映像。


 そして目の前の拳銃。


 偶然とは思えない。


 恐る恐る再び引き出しを開く。


 そこには、やはり拳銃が並んでいた。


 幻ではなかった。


 弘毅は言葉を失った。


 駿一とは何者だったのか。


 事故死したという話は本当なのか。


 次々と疑問が湧いてくる。


 その時――。


 ふと背筋に冷たいものが走った。


 誰かに見られている。


 そんな感覚だった。


 弘毅はゆっくりと窓の方へ顔を向ける。


 外はすっかり暗くなっている。


 診療所の庭の向こう。


 森へ続く茂みの中で、何かが動いた。


 ガサッ――。


 一瞬だけ人影が見えた気がした。


 それも一人ではない。


 複数だ。


 弘毅の表情が強張る。


 昼間、森で見かけた黒服の男達。


 なぜか、その姿が脳裏に浮かんだ。


 『まさか……』


 茂みの奥で何者かがこちらを窺っている。


 そんな不気味な気配だけが、闇の中から静かに漂っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ