第20話
「うん……別に。
ただ、運転、大丈夫かなって思って……」
弘毅が遠慮がちにそう言うと、奈津は頬をふくらませた。
「失礼しちゃうわね!・・・・
ただ、久しぶりに運転するから、ちょっと緊張してただけよ!」
そう言いながらも、奈津の視線はしっかりと前方を見据えている。
「ご、ごめん……。
それより、どこに向かってるの?・・・・」
弘毅は窓の外を流れていく景色を見回しながら尋ねた。
「昨日、見せてくれた写真の場所よ!・・・・」
奈津はそう言うと、信号待ちで車を止めた隙に、助手席のダッシュボードから例の写真を取り出し、弘毅へ差し出した。
「ほら、これ」
「わ、わかったの?・・・・
この写真の場所が……」
弘毅は思わず目を見開き、奈津を見つめた。
「うん。私の友達が、この場所に見覚えがあるって言ってたの。
もちろん違うかもしれないけど……」
奈津は少しだけ言葉を区切り、それから明るく微笑んだ。
「でも、じっとしてても始まらないでしょ?
まずは行ってみようよ」
その言葉に、弘毅は小さく息を呑んだ。
自分がまったく知らない場所を、奈津の友人が知っている――。
それは偶然なのだろうか。
それとも、この時代に来たことと何か関係があるのか。
胸の奥に、小さな違和感が広がっていく。
「う、うん……」
弘毅はそう答えながら、ハンドルを握る奈津の横顔をそっと見つめた。
朝の陽射しを受けたその横顔は、どこまでも真剣で、そしてどこか頼もしく見えた。
車は速度を上げながら、まだ見ぬ目的地へと走り続けていた。




