第19話
そのあまりにも可愛らしい奈津の愛車を目の前にして、弘毅は思わず戸惑った。
小ぶりで丸みを帯びたボディは、まるで玩具のように愛らしい。
弘毅が知る車とはあまりにも印象が違っていた。
「さあ、行くわよ!・・・・」
奈津はそう言うと、道路側へ回り込み、さっさと運転席へ乗り込んだ。
軽やかな動きでシートに腰を下ろし、慣れた様子でエンジンをかける。
「ま、待ってください!・・・・」
弘毅は慌てて助手席のドアを開け、奈津の車へと乗り込んだ。
「しゅ、出発!・・・・」
奈津は弘毅が乗り込んだのを確認すると、ハンドルを握りしめながら、おそるおそる車を発進させた。
どうやら久しぶりの運転らしい。
奈津の肩は不自然なほど強張り、その視線は真正面に固定されたままだ。
ハンドルを握る指先にも、力が入りすぎているのがわかる。
その様子を見た弘毅は、不安を覚えずにはいられなかった。
「だ、大丈夫?・・・・」
恐る恐るそう尋ねる。
「・・・・え? なに?」
奈津は前方から視線を外さないまま、聞き返した。
どうやら運転に集中しすぎて、ほとんど聞こえていなかったらしい。
「い、いや……何でもない」
弘毅はそっと顔を背けると、前方を見据えた。
そして奈津につられるように、全身を強張らせる。
しばらくして車は高速道路へと入った。
一定の速度で走り始めると、奈津にもようやく少し余裕が生まれたのか、肩の力がわずかに抜けた。
ちらりと弘毅に視線を向け、奈津が口を開く。
「ねぇ……さっき、何か言わなかった?・・・・」
その問いかけに、弘毅は一瞬だけ言葉に詰まった。




