ミケル卿、光る箱とちゅ〜るの物語
昼。
お人間さんは今日も光る箱を見つめている。
指先が踊り、顔が明るくなったり曇ったりする。
箱の中には何があるのだろう。
けれど、わたしが近づき、足元に頬を寄せると、
その視線はすぐにこちらへ落ちてくる。
撫でる手はあたたかく、柔らかい。
箱の中の世界よりも、いまこの瞬間のぬくもりの方が確かだ。
夜。
お人間さんは光る箱を閉じ、闇に包まれる。
まぶたという扉を下ろし、静かに息を整えていく。
夢という遠い場所へ旅立つその横で、
わたしはただ、見守っている。
胸の上下を眺めながら、
「今日も生きていてくれてよかった」と心の中でつぶやく。
寝返りのたびに伸びてくる手の温度を確かめると、
そこに生命の灯が感じられて、しっぽが小さく揺れる。
朝。
やわらかな光が部屋を染めるころ、
わたしの一日が始まる。
静かに歩み寄り、寝ぼけたお人間さんの頬に顔をすり寄せる。
そのたび、まぶたの奥に眠る意識がゆっくりと浮かび上がる。
「おはよう」と声が落ちる。
だが、わたしの真の目的はここからだ。
冷蔵庫の奥に眠る、尊き甘露――ちゅ〜る。
お人間さんが立ち上がる前に、わたしは戦略を練る。
喉を鳴らし、すり寄り、目を細める。
背伸び、見上げる、そして小さく鳴く。
そのたびに心が揺れ、ついに銀色の封が開かれる。
香りが広がる。
小さな戦いの末に訪れる、朝の祝福。
今日もまた、わたしは友との戦いに勝利した。
この王国に、静かな平和と、ちゅ〜るの香りが満ちていく。




