夢の階段
そわそわと、歩き出す音が聞こえる。
私は目を瞑ったまま、気配だけを探っていた。
「ギィー」――階段から床板が悲鳴をあげる。
この感じは、たぶん弟だ。
怖がって一歩一歩、回りをキョロキョロしている。
透視でもしているかのように、彼の呼吸まで伝わってくる。
(手を伸ばしても、空気しか掴めないのに。)
夢と現の狭間にある私の意識は、背後霊のように彼を追っていった。
「バタン…。」
トイレの扉は閉まる音だけを残す。
さすがに、放尿シーンは心の目も瞑って、耳も塞いでおこう――うん。
暫くして、再びトビラが「バタン…」。
行きとは対照的に、「ダダダダダ!」っと勢いよく階段を駆け上がる足音。
仏間の線香の匂いが、ふっと混じる。
彼の背中を追うように、私は布団のそばへ戻る。
天井を見上げた彼と、私の視線がぶつかる。
(声は出せない。ただ、ここにいると強く念じる。)
声にならない声で、彼は叫んだ。
そして、私を“見つけた”ように、涙をこぼして呟く。
「……お姉ちゃん。」
安堵した私は、また長い夢に落ちていった――写真立ての中の、あの笑顔のまま。
今回は「友情」という言葉から少し離れた、姉弟の物語を書きました。
けれど、どんな形であっても“想いが続いていく”ことは、
きっと友情の一番根っこの部分にあるものだと思っています。
血のつながりを超えても、想いのつながりが消えない。
そんな願いを、この一編に込めてみました。




