あの日の二人
この距離でもオーラを感じるほどの人が、前から歩いてくる。
女性か男性か、一瞬わからなかった。
でも近づくにつれ、それが知り合いだと気づく。
「クレア……だよね?」
「うん。」
彼女は、少し照れたように微笑んだ。
高校を卒業して、まだ数か月しか経っていない。
けれど、目の前の彼女は学生時代のイメージからかけ離れていた。
マッシュショートにハイトーンのシルバーグレージュ。
あの頃の、黒髪の「クレオパトラみたい」と呼ばれていた面影はもうなかった。
でも、その変化すら彼女をいっそう輝かせていた。
「なんかモデルが前から歩いてきたかと思ったよ?」
「えっ、そんなこと言われたことないよ。」
思わずそんなことを言ってしまった自分が少し恥ずかしかった。
学生時代、あまり話せなかった私は、もっと話したい気持ちを抑えきれなかった。
そんな心を見透かしたように、彼女が言った。
「私はもう家に帰るだけだし、萌々も時間あるなら、あのカフェいく?」
あの頃、放課後によく通った、外装が少し背伸びした雰囲気のカフェ。
女子高生たちの“ちょっと大人になれる場所”。
その瞬間、私は気づいた。
彼女の耳には、水瓶座のイヤリング。
そして、私の指には魚座のリング。
――そう、あの時の星占いのラッキーアイテム。
数年前、親友に誘われてやった相性占いで、
私は水瓶座、彼女は魚座。
結果は「最悪の相性」だった。
そのくせ、ラッキーアイテムは全く同じで“星座のシンボルを身に着けること”。
当時は笑い話だったけれど、
今日、それを身につけていた二人が、こうしてまた笑っている。
あの時の“最悪の占い”が、
いまは“最良の思い出”に変わっている。
そして、ふと心の中で思った。
――あの時、二人は同じことを思ってたんだって……。
それだけで、心が温かくなった。




