想いのカタチ
【第1章】 ミケル卿の午後
「みゃ~お。」
わし、ことミケル卿は貴族である。
今日も日の当たる窓際で優雅にお昼寝を嗜んでいた。
「ピンポーン」
わしの召使いが音のする方へ向かい、何やら手紙を受け取ってきたようだ。
こたつの上にポンっと置いて、召使いがどこかへ行ってしまう。
眠りを妨げられたので、こたつの上の手紙に天罰を下す。
「むしゃむしゃ……」
帰ってきた召使いは、べちょべちょになった手紙を私から奪い、
鬼の形相で何か言っていた。
わし、もう一度寝よう……。
【第2章】 届かなかった手紙
「はーい!」
チャイムに応えて、私は玄関へと向かう。
手紙を受け取り、部屋へ戻る。
すると、ミケルは物欲しそうな目でこちらを見つめていた。
「ご飯の時間ね。」
そう呟いて、私は封筒をこたつの上に置いた。
ミケル卿の食事を用意しに台所へ向かう。
今日も窓辺で優雅に昼寝をしておられた。
──その間に、すべてが起きた。
戻ったときには、封筒が消えていた。
小さな牙の跡と、ほんのりミルクの香り。
ミケルは封筒を咥えながら、こちらを見た。
「ミケルちゃん!なにやってるのぉぉ!」
封筒を無理やり取り返した。
そして、床に落ちた一枚の紙切れ。
そこには、インクの滲んだ一文だけが残っていた。
「ありがとう…。」
友人からの手紙の欠片は、まるでミケル卿の筆跡のように見えた。
手紙を取り上げられたミケル卿は、
餌を横目に、寝たふりしておられた。
私は小さく笑い、
あの方の寝息が聞こえる窓辺へと視線をやった。
【第3章】 郵便屋の見た夢
私は、この仕事が大好きだ。
毎日手紙を届けている。
想いを伝える、それは夢を届けることでもある。
特別に大切なものは、いつも手渡しで届けている。
「ピンポーン」
しばらくして、とても人の良さそうな男性が出てきた。
服には、猫の毛がたくさん付いている。
「みゃーお」
遠くから可愛い声が聞こえた。
印鑑を押してもらい、私は次の配達先へ向かう。
その時、家の中から怒鳴り声が響いた気がした。
振り返ると、窓辺に一匹の猫がこちらを見ていた。
口元には、白い封筒の端。
私は、思わず笑ってしまった。
きっとあの家の手紙は、もうちゃんと届いている。
手紙は、誰かに届くために書かれる。
でもときどき、宛先のない想いこそが、
一番遠くまで旅をする。
——そしてそれを食べる猫がいるなら、
その世界はまだ優しい。




