第九十七話:命を賭けても逃げない (その四)
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丘の頂上では、植物はまばらで背も低かった。木はほとんどなく、植生の大半は苔や草、低木で占められていた。
「少し速度を落とせ! イェレンをもう少し引きつけるど!」
彼女は命じた。
「た……隊長殿、何をおっしゃるのでごわすか? そいは自殺行為でごわす!」
戦士ブドゥ・ムィが答えた。
「おいの命令どおりにせいっ!」
「でも……」
「あら、かわいそうな葡萄実ちゃんの話に、ほんまに興味があるんやね……」
「分かった、分かったでごわす。ご命令どおりにしもす」
チィは速度を落とした。するとすぐに、ゴリラのような生き物が距離を詰め、今にも彼らに触れそうになった。
「速度を上げろっ!」
彼女は言った。
再び距離が開いた。猿のような獣は両手で土をすくい、彼らに向かって投げつけた。
「左じゃっど!」
土塊が彼らの脇を飛び抜けた。
彼らは何度も同じことを繰り返した。獣を近づかせては、再び距離を広げる。丘の頂上にあった凍っていない地表のほぼすべてが、間もなく掘り返され、そこにあった土が投げ飛ばされることで、その下の氷層がほぼ全域で露出した。
獣を挑発し続けるうちに、すぐ手の届くところにあった「弾薬」は尽きた。しかし、獣は止まらなかった。力いっぱい氷を殴りつけ、大きな塊を割り取ると、それを投射物として使った。
王さん――いや、グァングィ、ズィン家ん三番手は、早期探知・追跡・警告システムのように、比較的安全に攻撃を避けられるよう、騎乗している戦士に進む方向を叫んで伝えた。しかし、その代償として、彼女の声帯にも負担がかかり始めていた。声はかすれ、途切れがちになっていった。
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冷蔵庫ほどの大きさの氷塊が隊長の顎をかすめ、チィの左翼の羽を何枚か引き裂いた。大したことではない。だが、それでも恐ろしかった。
すでに心臓が激しく鼓動していた王さん――いや、グァングィ、ズィン家ん三番手だったが、その心拍数はさらに上がった。
おそらく、心地よい感覚ではなかっただろう。それでも、危険な状況では体内への酸素供給を増やし、筋肉だけでなく脳や目の働きを支える助けになる。脅威と戦うにせよ、逃げるにせよ、どれも欠かせないものだった。
だが、心拍数が高くなりすぎると、心室が血液で満たされる時間が短くなり、心拍出量がかえって低下する可能性がある。心筋への酸素供給も減り、虚血や胸痛を引き起こしかねない。
「もっと上じゃっど!」
彼女はしゃがれた声で叫んだ。
「右じゃっど!」
続けて叫んだ。
また別の氷塊が、すぐそばを飛び過ぎていった。
「もっと上じゃっ!」
ゴリラのような生き物が、再び大きな氷塊を割り取ったとき、別のガス溜まりが爆発した。
「今じゃ、急降下せいっ!」
チィは急降下した。地面に激突する寸前、隊長が叫んだ。
「機首を上げろっ!」
チィは地面すれすれで水平飛行に移った。フクロウのような生き物の足からぶら下がっていた王さん――いや、グァングィ、ズィン家ん三番手は、もう少しで地面を走り抜けてしまいそうだった。
チィは、氷塊を頭上高く掲げたイェレンへ向かっていった。
彼らが近づくと、ゴリラのような生き物は、氷塊を叩きつけようと、弧を描くように腕を振り下ろした。
「左じ……」
彼女は叫びかけたが、声が出なかった。
彼女は周囲を見回し、息を切らすようになった。そして……。
3
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左腕を伸ばし、鳥のような生き物の左胸から羽を何枚かむしり取った。痛みに反応して、その生き物は左翼の羽ばたきを少し弱めた。その結果、機体はそちら側へゆるやかに傾き、飛行経路がわずかにそれたことで、氷塊の一撃を受けずに済んだ。
その一撃で、地面の氷層に新たな亀裂が走った。だが今回は、ゴリラのような生き物が地面を何度も殴りつけたことで、すでに構造が弱くなっていた。氷層全体が崩れ落ちた。
その下には、極めて高圧のメタンガスが溜まった空洞があった。氷層はその上を覆うドームのような構造を成していたのだ。いわゆるピンゴだった。
生き物は、瞬く間にできたクレーターへと落ちていった。
4
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戦士ブドゥ・ムィは急降下の勢いを利用し、チィを全速力で丘の頂上から離脱させた。しかし、空中でガスの爆発に巻き込まれた。
彼らは吹き飛ばされ、丘陵の斜面――いや、かつて丘の頂上があった場所の地面に叩きつけられた。止まるまで、地面を何十メートルも転がった。その一帯は木々がまばらだったため、どの木にもぶつからずに済んだ。
とはいえ、着地はひどく激しく、痛みを伴うものだった。毛皮の外套を着ていても、擦過傷や引っかき傷は免れなかった。それでも、彼らはおおむね無事だった。骨折も、脳震盪も、深い切り傷もなかった。フクロウのような生き物も、比較的無傷だった。体は大きいものの、非常に軽い構造をしており、体積の大部分をふわふわした羽毛が占めていた。その羽毛が、衝撃を和らげるクッションの役割を果たしたのだ。
「隊長殿、大丈夫でごわすか?」
騎乗していた戦士は、右手を彼女に差し伸べながら尋ねた。
「おう。気遣い、ありがとじゃっど」
彼女はしゃがれた声で、ほとんど囁くように答え、その手をつかんだ。
「お〜い、おはんら、みんな大丈夫でごわすか?」
近づいてきた別の戦士たちが叫んだ。
「おう、大丈夫じゃっど!」
戦士ブドゥ・ムィが大声で答えた。
そして……。
5
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パリッ
パリパリ
パリパリパリ




