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第九十一話:恥ずかしくてももう我慢できない

1

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凍てつく風が絶え間なく彼女を打ちつけていた。マスクで顔の凍傷を防ぎ、ゴーグルで目の乾燥を防いでいた。


眼下に見える小さな木々は、なんとも愛らしく、同時に恐ろしくもあった。その見た目の小ささが、彼らとの間にある高度差を物語っていた。


心臓が激しく鼓動していた。彼女は鞍頭をきつく握り、両脚をチィの胴体にしっかりと押しつけた。そして、自分のハーネスと鞍をつなぐベルトを確認した。


巨大なフクロウのような生き物は、まるで乗り手の気持ちを察したかのように、速度と飛行高度を少し落とした。ほかのチィたちも、先頭の個体に合わせて飛行を調整した。


一時間ほど飛ぶと、木々のない一帯に川が大きく湾曲する場所が見えてきた。立ち上る煙の柱が、眼下に人がいることを示していた。


そこが駐屯地だった。


フクロウのような生き物は、旋回しながら降下を始めた。


降下するにつれて、多くの建物を囲む大きな長方形の木柵が見えてきた。そして、同じ毛皮の外套を着た男たちが何人も、腕を振っていた。


2

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チィが着地すると、すぐに兵士たちが駆け寄ってきた。彼らは乗り手たちが降りるのを手伝い、それからチィたちを厩舎へと連れていった。


「おい、元気にしちょっとか? ビナはどこじゃ?」


駐屯地の戦士の一人が敬礼しながら尋ねた。


「おお、あいつは来えへんで。そのおなごが救出任務であいつの代わりを務めるんや」


新任隊長の護送隊に加わっていた参謀の代理人が答えた。


「な……何じゃ? ふざけんな!」


「アカリ、わいが言うとるんは、そのおなごのことや。ほれ、ここにある参謀殿の命令書を読んでみい」


「冗談はやめっど!」


「参謀殿の命令書と、わい自身の証言まで疑うっちゅうんか?」


戦士アカリはたちまち口をつぐみ、目を大きく見開いたまま、直立不動の姿勢を取った。


3

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「ありゃ、誰んおなごじゃ?」


「新しか隊長じゃっち聞いたど」


「まさか……」


「なんで、あげんええ匂いがすっとか?」


「ズィン家ん者じゃっち聞いたど 。家紋まで持っちょっとか!」


「ズィン家? あげな辺鄙な場所に、なんでそげな高貴なおなごが来っとじゃ?」


「ビナはどげんなったとじゃ?」


「特別な任務に就いちょるっち聞いたど」


「そげなでたらめ、信じられっか。普通は、現職の隊長が自分の後継者ば発表すっとじゃろ。そいか、本人が死んだときぐらいじゃ。そいに、なんでアカリが任命されんかったとじゃ?」


「高貴な家柄んおなごじゃっでな。きっと政治的な事情じゃろ」


「じゃっどん、やっぱり、なんでそげな場所に貴族ば送り込む必要があっとじゃ?」


「知らん。何か罰んつもりかもしれんど」


「何の罰じゃ?」


「神のみぞ知る、じゃっど」


4

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見張りの任務についている者たちを除き、駐屯地の戦士たちは全員、門から管理棟へ続くメインストリートに整列していた。


彼らは胸を張り、右手で剣を斜め上に掲げたまま、微動だにせず立っていた。


王(ワン)さん――いや、グァングィ、ズィン家ん三番手と、その護送委員会は、臨時の任務と救出遠征の計画について詳細を詰めるため、管理棟の執務室へ向かいながら、整列した部隊を視察した。


会議は隊長室で行われた。簡素だが、実用的な部屋だった。


「以上です、お嬢様……隊長殿。何か問題があったら、街まで使いの者を送ったらええです」


参謀の代理人が言った。


「そうね……召使いに頼んで、皆さんに温かい飲み物でも用意してもらおうかしら……」


王(ワン)さん――いや、グァングィ、ズィン家ん三番手が言った。


「ああ、どうぞお気になさらず。うちらは今すぐ出発します。これ以上ここにおったら、夜までに着かれへんようになりますさかい。失礼します」


男はそう言うと、委員会のほかの者たちとともに退出した。


王(ワン)さん――いや、グァングィ、ズィン家ん三番手は彼らに同行しなかった。書類やメモに目を通し終えるため、執務室に残ったのだ。


管理棟には隊長の居住区もあったが、個人用の部屋は兵舎の兵士たちの居住環境より、さほど上等というわけではなかった。


大きな違いといえば、兵舎では共同の寝室を使うのに対し、こちらは個室であること。そして、兵舎の二段ベッドとは違い、普通のシングルベッドが置かれていることだった。


しかし、藁の敷物は同じで、私物を入れる木箱も同じだった。それだけだ。机もなければ、ベッドサイドテーブルさえない。ランタンは天井のフックに吊るされていた。


そして……


「お……おしっこ……」


彼女は小声でつぶやいた。


5

---------

首を伸ばして部屋の外を覗く。


「下僕さん!」


彼女が叫ぶと、藁の外套を着た男がやってきた。


「トイレはどこ?」


「ト……トイレ?」


「洗面所」


「?」


「便所」


「た……隊長殿……」


男は顔を赤らめながら言った。


「何?」


「い……いえ……何でもなかでごわす」


「言いなさい!」


「お……おいは、まさか……」


「まさか、何?」


「そ……そん……隊長殿はおなごでごわすから……」


「だから何?」


「お……おいは、隊長殿がそん……必要とされるとは……」


「ええ、便所が必要なのよ」


「そ……そいなら、近くん小さか村に行って、ええと……おなごがおっとかどうか……」


「何を言っているの?」


「た……隊長殿が必要じゃっちおっしゃったもんで……」


「おしっこがしたいの!」


「ああ……つまり、便所が必要っちゅうこっでごわすな……」


「さっきからそう言ってるでしょう」


「そいでは、失礼いたしもす」


男はそう言いながら、ベッドの下からおまるを取り出した。


「個人の衛生のための専用の部屋や設備はないの?」


「こ……個人の、何ちおっしゃいましたか?」

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