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第八十八話:勝っても許さない

1

---------

二日連続で、コロッセオでは何かの催しが行われていた。


「珍しいだって」


吉田(よしだ)さんが言った。


高橋(たかはし)さんと加藤(かとう)さんは、首を傾げながら彼女を見た。


「ん?」


二人が発したのは、それだけだった。


そこへ、伊藤(いとう)さん、田中(たなか)さん、それからほかの女子二人が加わった。


「どうしたの?」


伊藤(いとう)さんが尋ねた。


「あっちゃん、ハロー! ひっちゃんが『珍しいだって』って言った」


加藤(かとう)さんが言った。


「違う、違う。あたしじゃない。あの人たちがそう言ってるの」


吉田(よしだ)さんは顎で一つ上の列にいる市民たちの一団を指した。


伊藤(いとう)さんは加藤(かとう)さんを見たが、彼女はただ肩をすくめた。


「あっ、静(ジン)だ!」


吉田(よしだ)さんが叫んだ。


2

---------

紫チームのキャプテンが、剣を頭上高く振り上げながら走ってきた。


「模擬戦だよね? ねぇ、模擬戦だよね?」


伊藤(いとう)さんが尋ねた。


女子たちは吉田(よしだ)さんを見た。


「そこの人たちによると、本当の戦いだって。何か、デスマッチみたいなものらしい」


今回は目を大きく見開きながら、彼女は答えた。


高橋(たかはし)さんはアリーナへ向かって観客席を下り始めた。今度は、誰も彼女を止めることができなかった。


剣は重かった。確かに、確かに、柔道では自分より重い相手と対戦することもある。だが、両手で長時間その相手を持ち上げているわけではない。だから、いや、柔道の技術は、こうした大剣での戦いではあまり役に立たないだろう。そうだろう?


どうすればいい?


王(ワン)さんは頭を下げたまま、深く、一定のリズムで呼吸していた。そして、息を吐きながら、剣の柄を両手でつかみ、右肩の上へ振り上げた。


彼女は頭を上げ、迫ってくる相手をじっと見つめた。


待つ。


3

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10メートル。


待つ。


9メートル。


彼女は剣の柄をさらに強く握った。


8メートル。


深く息を吸った。


7メートル。


目を閉じた。


6メートル。


ゆっくりと息を吐いた。


5メートル。


目を開いた。


4メートル。


右足首を、剣の刃の平たい面に押し当てた。


3メートル。


「背負い投げ」


彼女は肩を支点にして柄を下へ引きながら、足首と腰で刃を上へ押し上げた。


2メートル。


紫チームのキャプテンは、彼女の頭へ一撃を加えようと剣を振り上げていた。


1メートル。


彼女の剣の刃は弧を描き終え、その平たい面でビナの頭に一撃を加えながら、彼の攻撃を受け止めた。


0メートル。


「左体捌き」


彼女は右足の後ろへ左足を斜めに引き、右足のつま先を軸に身体を回転させた。そして、右足を回して四分の一回転を完成させ、倒れてくる相手との衝突を避けた。


−1メートル。


紫チームのキャプテンは、地面に真っすぐ倒れ込んだ。


「一本」


4

---------

観客は静まり返った。コロッセオはまるで墓地のようだった。


「ふっ……ふっ……」


王(ワン)さんは、背後から聞こえてくる荒い息遣いに気づいた。


「さっちゃん!」


振り返ると、友人がその場に立ち止まり、上半身を前にかがめ、両手を膝についていた。口と鼻からは白い息がふっ、ふっと吐き出されていた。


「じ……静(ジン)のバカ……」


高橋(たかはし)さんが息を切らしながら言った。


「何しに来たの?」


「そ……それは私の台詞……」


「まあいいよ、私は……」


バシッ!


王(ワン)さんの頭が右へ弾かれた。左頬に、高橋(たかはし)さんの右拳がめり込んでいた。


「二……二度と、あんな危ないことしないでよ」


「もう二度と、あんな危ないことはしないよ……」


「約束する?」


「うん。でも、ほかの危ないことをしないっていう約束はできないけど……」


高橋(たかはし)さんは左手を握りしめ、もう一度拳を繰り出した。


今度は、王(ワン)さんが右手のひらで友人の拳を受け止めただけだった。


高橋(たかはし)さんは、なおも荒い息をつきながら、険しい表情で彼女を見つめた。


そして――


5

---------

チュウウウウウゥ〜


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