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第七十九話:何を言っても理解してくれない

1

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行動できる場所が制限され、常に監視されていることには苛立ちを覚えたが、身を守れる場所があり、比較的まともな食事ができることには安心感があった。特に、それまでに経験してきた苦難を考えれば、なおさらだった。


もちろん、全員がこの状況そのものを受け入れていたわけではない。


それでも、わずかながら改善はあった。そして、多くの人にとって、それは、ここから先の状況がどうなっていくのかについて、楽観的な見方をすることにつながった。もしかすると、楽観的すぎると言うべきなのかもしれない。


その改善とは、少なくとも井上(いのうえ)くんだけは、どういうわけか、彼らが……捕虜? 客人? 保護対象? 見張られている者? 管理対象? 拘束者? まあ、とにかく、彼らを管理している者たちが話していることを理解できるようになったことだった。


「まさか。俺たちをからかってるんじゃないだろうな、井上(いのうえ)!」


もちろん、全員というわけではない。多くの人が信じていたが、全員が信じたわけではなかった。


それを疑い続ける者もいた。


中には、むしろ疑念を深めた者までいた。


「なあ、なんであいつだけ別の場所へ連れていかれたんだ?」


「俺たちを裏切ったんじゃないか?」


「俺たちをあいつらのために監視してるんじゃないか?」


「井上(いのうえ)がいなかったときに、あの赤い光が現れたんじゃなかったか?」


2

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「えっ? 何だって?」


小林(こばやし)さんは、中村(なかむら)くんのいる方向を見ながら言ったが、どうやら彼の姿が見えていないようだった。


「ごめん、エマ。でも、僕にはもう彼女がいるんだ」


彼は深々と頭を下げて言った。


「えっ? 何だって?」


彼女はただ、もう一度繰り返した。


「僕……君の気持ちは、本当にありがたいと思ってる。それに、それを伝える勇気も尊敬してる……」


「えっ? 何だって?」


「そ……それに、君の気持ちに応えることはできないけど、友達でいてくれる? 君との友情は、僕にとって、とても大切なものだから……」


「えっ? 何だって?」


雪を踏みしめる音が聞こえてきた。


中村(なかむら)くんのクラスメイトの一人だった。


「あ、ガスマス……いや、中村(なかむら)、こんなところにいたのか……。探してたんだ……。えっと……ちょっと問題があって、君の助けが必要なんだ……」


男子が言った。


「ああ……分かった。すぐ行くよ。先に行ってて。すぐ合流するから」


彼はそう答えた。


それから小林(こばやし)さんのほうを振り返った。


「ぼ……僕、悪いけど行かなきゃ。これからも連絡取り合おう」


彼が立ち去ったあと、長い沈黙だけが残った。


そして――


「えっ? 何だって?」


3

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「ねえ、さっちゃん、見て」


加藤(かとう)さんが寮の入口を指差しながら言った。


二人の兵士が、佐藤(さとう)先生を伴って入ってきた。二人の兵士は、王(ワン)さんと吉田(よしだ)さんを抱えていた。


加藤(かとう)さんと高橋(たかはし)さんは、二人のほうへ走っていった。


「二人とも大丈夫……うっ……酒くさっ!」


高橋(たかはし)さんが鼻をつまみながら言った。


「あら、どうやら大丈夫みたい。今は眠っているだけね」


先生が答えた。


「なんで二人とも、こんなに酒くさいの?」


加藤(かとう)さんが尋ねた。


「いくつか思い当たることはあるけど、確かなことは何も言えないわ」


先生はそう言った。


兵士たちは、入口近くの二段ベッドの空いている下段に二人を寝かせると、部屋を出ていった。


「先生のおっぱい、すごく柔らかい……」


王(ワン)さんが寝言を呟いた。


加藤(かとう)さんと高橋(たかはし)さんは、顔を赤くした佐藤(さとう)先生を見た。


先生は激しく首を横に振り、まるで逆位相で動くワイパーのように、腕を交差させたり、開いたりした。


女子二人は、片方の眉を上げ、唇を細く結び、少し首を傾げ、片方の手をもう片方の手に添えながら、先生を見続けた。


4

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ブォッ、ブォッ、ブォッ。


寮の外にいた数人の生徒たちは、3頭のチィに乗った騎手が低空を通過していくのを見ることができた。あまりにも低く、羽ばたきによる風まで感じられるほどだった。


彼らは東の空へ向かっていた。


そして、使用人たちの一団が、熱した石の入った陶器の壺を満載した4台の荷車を引いてきた。


それらは寮の内部を暖めるために使われていた。


石は、それぞれの寮のほぼ中央に設置された、鉄製の箱のようなものの中へ入れられた。それは、かなりストーブに似ていた。


その類似は単なる偶然ではなかった。明らかに、古い鉄製の暖房ストーブを改良したものだった。


石を入れる部屋には鍵がかけられていた。熱い石による事故や、誤った使い方を防ぐための、さらなる安全対策だった。


もし井上(いのうえ)くんの話を信じるなら、兵士たちは、何年も前に、薪を燃やして寮を暖めるためにストーブを使った際に起きた悲劇について話していたらしい。


寮にいた兵士たちは全員、眠っている間に死亡した。


そして、彼らの遺体を運び出すために部屋へ入った多くの人々でさえ、さまざまな症状を経験した。


頭痛や混乱、めまい、視界のぼやけ、脱力感、吐き気や嘔吐、さらには胸の痛み、息苦しさ……。


5

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「えっ? 何だって?」

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