第七十八話:絶対に何を言われても裏切らない
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「な……何が起きてるの?」
佐藤先生には、廊下の外にいる兵士たちが、何か聞き取れない言葉を呟いているのが聞こえた。もっとも、はっきり聞こえたとしても、彼らが何を言っているのか理解できたわけではない。
赤い光が消えた。
体育館で見た、あの赤い光と同じものだった。
それから彼女は、二人の女子を見た。二人ともベッドでぐっすり眠っている。
彼女はため息をつき、肩の力を少し抜いた。
2
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寮にいる人たちも、あの赤い光に不安を感じていた。
「体育館のときと同じものだったのかな?」
「さあ? でも今回は、壁か天井に穴が開いたわけでもないし」
「船のときも、水が鮮やかな赤色に光ったよな……」
「でも、あれは水だけだった。今回みたいに、視界全体が光に支配されたわけじゃない」
「この世界……怖いよ。今すぐ家に帰りたい」
「おい、井上はどこだ?」
「知らない。たぶんトイレにでも行ったんじゃ……」
「ああ、見たぞ。何人かの警備兵と、あの紫色のローブを着た変な奴に付き添われてた」
「何だって?」
3
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「な……何だったんだ、あの光は?」
井上くんが椅子に座ったまま、周囲を見回しながら尋ねた。
「さあ……それがまさに……ひっ……わいらが知ろうと……ひっ……しとることや……」
頬を赤くし、ろれつの回らない声で、紫色のローブをまとった年配の男性が答えた。
そのとき、誰かが扉をノックした。
「わいら……ひっ……ちょっと……ひっ……忙しいんや……」
男が言った。
「大事なこっでごわす、隊長!」
扉の向こうから、くぐもった声が聞こえた。
「ほんなら、許したる」
扉が軋んだ。
4
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目を大きく見開き、少し息を切らした兵士が姿を見せた。
「クローン・ウスルッ様!」
「回りくどいこと言わんと……ひっ……何がそないに重要なんか、はよ言いや……」
兵士は王室顧問を見、それから少年を見て、再び王室顧問を見た。
「ええから……ひっ……言うてみ」
「赤か光んこつでごわす、隊長」
「せやせや……わいら全員見たんや……全部、真っ赤になった……ひっ」
「そいじゃなかど、閣下。発生源は高原ん森、山ん麓ん近くに特定されちょっど」
年配の男性は突然立ち上がり、目を大きく見開いた。
「ほんなら、すぐそこへ行こか」
彼は断固とした声で言った。
先ほどまでの酔った様子は、彼には一切なかった。
兵士はもう一度、王室顧問を見、それから少年を見て、再び王室顧問を見た。
「『すぐに』言うたやろ」
彼らが扉を通り過ぎると、男は廊下にいた二人の警備兵に、ただ手で合図を送った。
二人の警備兵は部屋へ入り、井上くんをつかんだ。
警備兵の一人は、生徒の前に置かれていた杯を何気なく手に取り、中の飲み物を飲んだ。
それから二人は、少年を寮へ連れ戻した。
5
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小林さんは、少しでも手を温めようと、両手に息を吹きかけていた。
寮の建物の裏手にある場所は、凍えるほど寒かった。
雪を踏みしめる音が聞こえた。
中村くんだった。彼もまた、両手に息を吹きかけながら、手をこすり合わせていた。
「た……来てくれて、ありがとう……。ごめんね、中村くん。呼び出したりして……」
彼女は顔を赤らめながら言った。
「全然いいよ」
彼はそう答え、首の後ろを掻いた。
二人はしばらく黙っていた。
「それで、何を話したいの? 小林さん」
「エマって呼んで……」
「エマさん」
「ただのエマで」
「エマ。分かった。じゃあ、俺のことも日向って呼んで……」
「日向? 素敵な名前だね」
「そう思う? ありがとう。エマも素敵な名前だよ……」
それを聞いて、彼女の顔はさらに赤くなった。
「そ……それで、こないだの私の態度について謝りたくて……」
「ああ、気にしなくていいよ。何が起きたのか、俺には分からなかった。でも、もし俺が何かしたのなら、俺のほうこそ謝るよ」
「違うの。謝らなきゃいけないのは私のほう。私、何が起きたのか勘違いしてたの。あのとき、もう一人の男子が私のことを話してるんだと思って……」
「君のことを? そいつ、何て言ったの? もし君を傷つけるようなことを言ったなら、俺が謝らせるよ……」
「あ、違うの。そうじゃなくて。あの……その……ガス……マス……ターのこと……」
彼女は声を落としながら、言葉に詰まった。
「ああ、あれね。長い話なんだ。でも、君とは何の関係もないってことは保証するよ」
「私、あなたにひどいことを言ったし、ひどいこともした。だから、お願い……許して」
彼女は深々と頭を下げた。
「ちょ、ちょっと。そこまでしなくていいよ。本当に気にしてないから。勘違いなんて、よくあることだし。こうしてまた普通に話せるようになって、俺は嬉しいよ。あのことなら、もう気にしなくていい」
「実は、もう一つ話したいことがあって……」
彼女は左手の人差し指で髪をくるくるといじりながら言った。
中村くんは、少し首を傾げたまま黙っていた。
「私……その……言いたいのは……私……私、あなたのことが好き、中村くん……日向……」
彼女は息を切らし、心臓は激しく鼓動していた。
ついに言えた。
しかし、彼の反応を見た瞬間、彼女は目を大きく見開いた。顔に浮かんでいた優しい笑みも、口角の下がった表情へと変わった。
彼の唇がぴくぴくと動いていた。
これは何だろう?
気まずそうな笑み? それとも、薄笑い?
「俺も正直に言うよ、小林さん……俺、もう彼女がいるんだ……」




