第七話:身にしみるほど寂しい
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鈴木くんは目を覚ました。
辺りはかなり暗い。手を動かしてみると、身体は何かビニールのようなシートに包まれていた。隙間からわずかに光が差し込んでいる。
体育館の瓦礫に埋まっているのか……。
腕を伸ばして周囲に触れてみる。いや、瓦礫というより、ゴムのような感触だった。
周囲の物を押しのけながら身を起こすと、さらに光が差し込んできた。室内は薄暗かったが、ドアから差し込む光だけで、そこが体育倉庫だと分かった。
いや、正確には、ドアがあった場所から差し込む光だった。なぜか扉は床に倒れたままになっていた。
身体を包んでいたビニールのようなシートは、保温用のエマージェンシーブランケットだった。
床には救急箱がいくつも散乱している。
「そうか。一年生は応急手当と救急資器材を使った一次救命処置の講習を受ける予定だったんだ……」
鈴木くんは独り言を漏らした。
すぐ近くにはAEDが転がり、その周囲には、自分が埋もれていたものと同じEVAマットが何枚も積まれている。
そこで彼は気づいた。
しんと静まり返っていた。聞こえるのは、風が唸る音だけだった。
2
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彼は肩をすくめた。寒い。とにかく寒い。そこで、あの非常用保温シートを何枚か引っ張り出し、防寒着代わりに身にまとった。
彼はドアへ――いや、正確には、かつてドアがあった入口の開口部へ向かって歩き出した。そのとき、パキッという音がした。何かを踏んでしまったらしい。
スマートフォンだった。黒いカバーに格闘漫画のキャラクターのステッカー。スマホアクセサリーを除けば、学校の男子生徒の誰のものでもおかしくない。そこには「光国のマジックプリンセス☆セーラーキュア・ヴェルディ」のスマホチャームが付いていた。
鈴木くんはそれをしばらく見つめ、痛むように左頬をさすった。だが、その口元にはかすかな笑みが浮かんでいた。
「やべっ。踏んだの、もう割れた後だったらいいんだけど……」
ひび割れた画面を見て、彼はそうつぶやいた。
「さっちゃんにボコられる。」
鈴木くんは高橋さんのスマホをズボンのポケットにしまい、倉庫を後にした。
3
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誰もいない。
体育倉庫を出て体育館へ向かったが、そこにも人影は一つもなかった。
鈴木くんが反対側へ向かって歩くと、体育館シューズのゴム底が体育館の床を擦る音が、響き渡った。
途中、血まみれの肉片や骨があちこちに散乱しているのが目に入った。
彼は足を止めた。鼓動が速まる。呼吸も荒くなる。目を見開いたまま周囲を見回した。崩れた正面の壁。屋根に開いた大穴。粉々になった窓。そして、もう一度、正面の壁へ視線を戻した。
まるで、あの化け物がまたそこにいるような気がした。
「いや、そんなこと考えるな。さっちゃんも……みんな、きっと無事だ……」
彼は目を閉じた。深く息を吸い、ゆっくりと吐いた。そして目を開けると、再び歩き始めた。
震えながらも、一歩ずつ前へ進んだ。
4
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外にも、人の気配はまったくなかった。男たちの死体も、化け物たちの死骸のほとんども姿を消していた。
いったい、何が起きたというのか。
吹き荒れる風は雪の上の足跡を消し去り、あちこちに残っていた血痕の大半も覆い隠していた。
「みんな!」
鈴木くんは叫んだ。
返事はなかった。
どうすればいい? 行方のわからない仲間を捜すのか。だが、手がかりは何ひとつない。このまま一人でここに残るのか。それとも、寒さか飢えで死ぬのを待つのか。
そのとき、谷の向こう、森の中から立ち上る一本の煙が目に入った。
仲間か。それとも敵か。
「よし、決めた」
そう言って、彼は谷へ向かって歩き始めた。
だが、すぐに足を止めた。
そして体育館へ向かって駆け戻った。
5
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男子トイレ。
「~~~~っ、生き返るぅ!」
鈴木くんがそう漏らした。
ジョロロロロロロ




