第六話:まだ納得できないほど悲しい
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王さんは、高橋さんが身体を震わせ、歯をガチガチと鳴らしていることに気づいた。
「彼の容体は?」
そう尋ねながら、王さんは高橋さんに近づく。
「い……息は……あります……でも、すごく弱くて……」
「もっと暖かい場所へ運ばないと……」
二人は周囲を見回した。
吹き飛ばされた正面の壁。天井に開いた巨大な穴。割れた窓。
あらゆる場所から冷たい風が体育館へ吹き込んできていた。
「た、多分……体育倉庫なら……」
王さんは右手を振って、近くにいた女子二人を呼び寄せる。
鈴木くんを運ぶためだ。
さらに、鈴木くんの友人三人も手を貸した。
「な……何があったの……?」
多くの生徒が泣いていることに気づき、高橋さんが尋ねる。
「見てなかったんだね……。当然か。一人の男の子が亡くなったの」
「え……?」
「もう一匹、別の怪物が窓から入ってきて、その子を襲って……」
高橋さんは、その場で立ち止まり、両手で口を覆った。
「べ……別の怪物……?」
「まあ、そのことは今は気にしなくていいよ。そいつも、もういなくなったから」
そう言いながら、王さんは高橋さんの背中を軽く押し、再び歩き出すよう促した。
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男子生徒の一団の横を通り過ぎると、彼らの声が聞こえてきた。
「王さんって、やっぱり美人だよな!」
「一緒に運ばれてるあいつ、誰だ? 死んでるのか?」
「いや、まだ生きてるらしい。でも、あの化け物に襲われたんだって」
「そいつ、あの獣を挑発してたやつじゃなかったか?」
3
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「このままここには置いておけません」
伊藤さんが佐藤先生に言った。
先生は何も答えず、ただ静かにうなずく。
二人は荒れ果てた体育館を見回した。
そして同時に体育倉庫のほうへ視線を向け、互いに目を合わせる。
考えていたことは同じだった。
佐藤先生はしゃがみ込み、渡辺くんの身体を持ち上げようとする。
だが、一人では持ち上がらない。
「中二階の子たちって、こんなに力があったのね……」
先生は思わず呟いた。
「十分あります」
そう言って伊藤さんも先生に加わり、二人で渡辺くんの身体を持ち上げた。
クラスメイトたちに支えられ、ようやく立っている田中さんが、二人が体育倉庫へ向かって歩き出す姿を力なく見つめていた。
4
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「誰、あの子?」
伊藤さんと佐藤先生が渡辺くんを運んで通り過ぎると、一人の生徒が尋ねた。
「わ……わからない……」
泣いていた女子の一人が、しゃくり上げながら答える。
「彼は一年生だったらしいよ。ミッちゃんの知り合いだったみたい」
「お前、田中さんのこと、ミッちゃんなんて呼ぶほど仲良かったっけ?」
「本人がそう呼んでいいって言ってたんだよ……」
「それ、一年の相談会でみんなに言ってただけだろ。お前、その場をたまたま通りかかって聞いただけじゃん」
5
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王さんたちと伊藤さんたちの一行が体育館のステージのほうへ向かって歩いていくと、多くの生徒たちが急に落ち着きを失い、中には露骨に警戒した様子で入口を凝視している者もいた。
そこには、毛皮のコートをまとい、剣を手にした男たちの一団が立っていた。
「タ・ナ・カ?」




