第六十七話:何も見えなくてもじっとしていられない (その一)
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佐藤先生は船酔いしていたが、小林さんの友人に頼まれて、彼女の馬車へ行った。先生は中へ上がり、女子の隣に座った。
先生は何も言わず、ただ生徒の両手を握った。
「酷いわ、先生、とっても酷い……」
彼女は泣き言をこぼした。
「うん」
「男の子なんて……」
「うん」
「酷いわ……」
「うん」
ほかの女子の一人が言った。
「先生、もう30分以上、ずっとああやって言い続けてるよ……」
先生は小林さんの手を、さらに強く握った。
そして――。
ドンッ。
船がまた揺れた。
女子たちはその揺れで、まるで中華鍋で炒められる野菜のように、互いに折り重なった。
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船の下には、巨大な黒い影があった。巨大なナマズのように見えたが、これほど巨大な生き物が、こんな浅い水の中を泳げるはずがない。
すると、船員たちは、その影が一匹の巨大な魚のような生き物ではなく、無数の小さな魚のような生き物の群れであることに気づいた。
馬車の中はあまりにも窮屈だったため、多くの生徒たちが外へ出ていた。しかし、その一方で、外はあまりにも寒かった。馬車の中に残るか、外へ出るか――どちらを選ぶかは、どの快適さの要素を、どこまで許容できるかという、それぞれの個人的な基準によって決まっていたようだった。
巨大な魚のような生き物の群れに船がぶつかったとき、馬車の外にいた者たちは甲板へ倒れ込んだ。
いや、むしろ、あの巨大な魚のような生き物の群れが船にぶつかったのだ。
彼らには、舷側の周囲で船員たちが慌ただしく動き回り、水面に棹を突き入れてかき回しているのが見えた。
しかし、魚のような生き物たちの群れは散らなかった。棹で水をかき回している場所の周辺だけは一時的に離れるものの、棹が引き抜かれると、すぐにまた集まり直した。
「グンラ・ヴィミヌ・ミヅニ・ドミ・ガ・ドラヌ?」
隊商の護衛をしていた戦士の一人が、船員の一人に尋ねた。
船員はただ肩をすくめると、再び棹を突き入れて水をかき回す作業に戻った。
すると、魚のような生き物たちの群れは船の前方へ進み、次々と水面から飛び出し始めた。
最初は、水面から飛び上がっても、空中に弧を描きながら再び水へ落ちるだけだった。
しかし、その跳躍は次第に高くなっていった。
やがて、群れ全体が水の外へ飛び出した。
そして、淡い青色の光を放ちながら、一匹一匹の小さな魚のような生き物が、小さなムクドリのような鳥へと姿を変えた。
それらは巨大なムクドリのような鳥が船の前を飛んでいるかのように見えるほど巨大なムクドリの群れ――巨大なムクドリの飛翔群を形成した。
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その群れはあまりにも広大で、嵐の雲のように太陽光を部分的に遮っていた。鳥のような鳴き声が重なり合い、耳をつんざくような轟音となって響いている。無数の羽ばたきが一斉に強い風を生み出し、川面を激しく揺らしていた。
小さな鳥のような生き物たちが群れから次々と飛び出し、船上の人々へ向かって上空から降りてきた。
そのうち一匹に突かれた程度なら、せいぜい鬱陶しいだけだった。しかし、連続して攻撃を受ければ、皮膚が少しずつ削り取られていく。
戦士たちは剣を振りかざし、船員たちは棹を振り回した。しかし、彼らは基本的に攻撃を免れていた。小さな鳥のような生き物に偶然ぶつかられることはあった――それでも、あまりにも数が多いため、その一部が彼らに当たるのは避けられなかった。
それでも、標的は学校の皆さんのようだった。
最初に狙われたのは、馬車の外にいた者たちだった。彼らは馬車の中へ飛び込んだ。
しかし、あまりにも多くの小さな鳥のような生き物たちまで中へ入り込んできたため、彼らは車内をできるだけ密閉しようとした。後部の帆布のフラップを可能な限り強く押さえつけ、下へ押し下げながら、その左右の縁を固定された幌に押しつけた。
馬車の中へ入り込むことができた個体は、生徒たちによって次々と排除された。
しかし、外にいる個体たちは幌を突き始めた。
帆布は非常に頑丈だったが、絶え間なく繰り返される突き攻撃によって、みるみるうちに引き裂かれていった。
彼らは帆布に開いた穴に毛皮の外套を押し当てた。しかし、ほとんどの馬車では、それだけの数の外套が足りなかった。
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甲板には、船員たちや戦士たちのほかに、馬車へ戻る時間がなかった生徒たちも何人かいた。
伊藤さんと田中さんは、船酔いが少しでも楽になることを期待して、外の空気を吸うために馬車から出ていた。しかし、効果はなかった。そして、小さな鳥のような生き物たちが攻撃を始めたとき、馬車へ走って戻ることもできなかった。二人はその場にしゃがみ込み、両手で頭を覆った。
しかし、生き物たちは二人を突かなかった。しばらくして二人は、そのうち何羽かは、あまりにも混乱した状況の中で避ける動きが間に合わず、ただ二人にぶつかってきているだけなのだと気づいた。そのため二人は、ほとんど無傷のまま、その生きた雲の中を歩くことができた。ただし、ときどき口の中に入り込んだ羽毛や羽根を咳き込んで吐き出さなければならなかった。
馬車の間を通り抜けていくと、二人は、物資を積んだ馬車と、戦士たちを運ぶために使われていた馬車が、小さなムクドリのような生き物たちに襲われていないことに気づいた。
伊藤さんは立ち止まり、右手で顎を支えながら、しばらく考え込んだ。
「どうしたの?」
田中さんが叫んだ。
しかし、鳥のような生き物たちの騒々しい鳴き声にかき消され、伊藤さんには田中さんの声が聞こえなかった。
そこで、田中さんは両手を伊藤さんの耳元に当て、もう一度尋ねた。
「え、何でもない」
伊藤さんも、耳元で叫ぶように答えた。
それから伊藤さんは田中さんをつかみ、物資用の馬車へ引っ張っていった。
中もまだ騒がしかったが、ムクドリのような生き物たちは飛び回っていなかった。
「な……何これ?」
田中さんが叫んだ。
「さぁ……」
伊藤さんは、それだけ言った。
そして周囲を見回し、酒の入った壺を一つ手に取った。
「ま……まさか、あのイノシシのときみたいに、火をつけるつもり?」
「うーん。ちょっと違う。仮にできたとしても、おそらく全部燃やすことになる……私たちも含めて」
「なるほど……。でも、それならどうするの?」
「分からな……」
彼女はそこで言葉を止め、ロープを一本手に取ると、編み目をほどいて何本かの細い紐に分けた。
その紐を使い、片方の端を壺の首に結びつけた。
「みっちゃん、ついてきて。水を汲もう」
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何も見えなかったため、船員たちは船が川岸にぶつかるのを避けられなかった。今度は、船が座礁してしまった。




