第六十六話:どうしても分からない
1
---------
渡し船は下流へ向かって進んでいた。川の流れそのものに運ばれるため、上流へ引く際に使っていた荷役用の馬のような生き物たちは、今では船の生きた積み荷の中にいた。
水位が非常に低かったため、船底は川底からかろうじて浮いている程度だった。船の喫水がほんの少し変化するだけでも、川底にぶつかってしまう。一方では、船に載せる荷物の重量を非常に均等に分散させなければならなかった。もう一方では、重量を完全に均等に分散させたとしても、船はどうしても時々川底にぶつかってしまった。何しろ、川底は決して完全に平らではなかったのだから。
少なくとも、道中に滝はなかった。しかし、川には曲がりくねった場所があり、棹で押しながら慎重に方向を変える必要があった。
これらすべてが、何の影響もなく済むわけではなかった。特に、陶器のような壊れやすい非生物の積み荷には、藁を詰めて衝撃を和らげる必要があった。一方、生きた積み荷は、より激しい揺れによって多少のストレスを受けることがあった。
そして――
高橋さん、佐藤先生、伊藤さん、そしてほかの何人かは、船酔いの犠牲者になっていた。王さんでさえ、あまり調子がよくなかった。
2
---------
川が曲がっている場所の一つで、船は川底の岩の一つにぶつかり、引っかかってしまった。一瞬、本当に転覆する危険があった。船の後部側に水が溜まり、船尾が危険なほど沈み込むと同時に、船体が右側へ傾いたのだ。
船員たちが船上に身体を固定しながら、息を合わせて棹を使い、自分たちの身体を実質的に力の伝達軸として、船の動きを食い止めなければ、船の船首が川底に引っかかったまま、船尾側の下には水が流れ込み続けて溜まり、船尾を持ち上げていくことになっていた。そして最終的には、船が転覆していた可能性がある。船の全長や全幅が川の深さの数倍もあったとしても、それは起こり得たのだ。
馬車の中にいた人々には、そのすべてが、全員が前方へ引っ張られているように感じられた。おそらく、非常に不快な感覚だっただろう。あの未知の世界へ飛ばされる直前、体育館で感じたものとまったく同じだった。
しかし、多くの者がようやく外の様子をうかがうだけの勇気を出せた頃には、すでに危機は去っていた。そして、船員たちに何が起きたのか尋ねたところで、当然ながら意味はなかっただろう。彼らが何を口にしたとしても、馬車の中の人々には、その言葉を解読することができないのだから。
3
---------
夜明けの光が幌の帆布を透かして差し込んでくると、小林さんは馬車から飛び出した。スマートフォンの電源を入れて何かをメッセージで送り、それからしばらくの間、馬車の間を歩き回っていた。やがて、ピロン、と通知音が聞こえた。
目をこすり、あくびをしながら、中村くんが馬車から顔を出した。彼女の姿を見ると、突然、完全に目が覚めたようになり、馬車から飛び降りた。
「お……おはようございます、中村さん」
彼女は顔を赤らめながら言った。
「よ!」
彼が答えた。
そのとき、船が岩にぶつかって揺れ、二人の身体のバランスが崩れた。そして、彼女は中村くんにぶつかってしまった……。彼女はしばらくの間、まるで彼の心臓の鼓動を聴診するかのように、彼の胸に寄りかかったままだった。
だが、その鼓動が彼の心臓によるものなのか、それとも自分の心臓によるものなのか、彼女には分かっただろうか?
いずれにせよ、おそらくそんなことはどうでもよかった。
「メ……メッセージ、見てくれましたか?」
彼女は、まだ彼に寄りかかったまま尋ねた。
「み……見たよ、もちろん。だから、ここに来たんだ。何を伝えたかったの?」
「わ……私、それは……」
「君……?」
「私が……」
そして――。
「おっ、そこにいたのか、ガスマスター!」
馬車から顔を出した男子生徒の一人が言った。
「ガ……ガス……マスター?」
小林さんがつぶやいた。
「おっと! 君の名前、なんだっけ? 小林さんだったよな。おはよう! 中村から、こないだ何があったのか聞いたよ。俺たち、あのとき起きたことを勘違いしてたんだってな。もう俺たち、こいつのことを――」
中村くんは、口の片側だけを歪めて笑いながら、彼女の目を見ないように後頭部をかいた。
「ひ……酷いよ! 女の子を呼ぶのに、そんな呼び方……」
小林さんはそう言うと、自分の馬車へ走って戻った。
中村くんは、口を開けたまましばらく呆然と立ち尽くしていたが、やがて彼女を追いかけ始めた。
しかし、彼が追いつくより先に、彼女はすでに馬車の中へ戻っていた。
彼はそこへ頭を突っ込んだ。
すると、悲鳴とともに顔を蹴られた。
「助平!痴漢!変質者!エッチ!」
馬車の中にいた女子たちが叫んだ。
4
---------
中村くんは左頬をさすりながら戻ってきた。
「おい、マスター、どうしたんだ?」
男子たちが尋ねた。
「お……お前らのせいだよ、この馬鹿ども!」
彼は言い返した。
「でも、俺たち何したんだよ?」
「うるさい! ほっといてくれ!」
男子たちが馬車の中へ戻っていくと、中村くんは船の床に座り、馬車の車輪の一つに寄りかかった。
5
---------
それからスマートフォンを取り出したが、メッセンジャーアプリを開くと、小林さんにブロックされていることに気づいた。




