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第六十四話:危なくても受動的にならない (その二)

1

---------

「高橋(たかはし)、ここで何してるの?」


王(ワン)さんが、もう一度尋ねた。


「えぇ? さっちゃんじゃなくて、高橋(たかはし)ってよぶの?」


彼女が答えた。


「とぼけないでよ。馬車の中に残ってるはずでしょ……」


「あなたが言った通り、あそこに残っていても、こっちに来ても危険よ。それに今、あの馬車の中には、あの狼たちよりはるかに危険な生き物が26匹もいるのよ。とっても、とっても、とっても好奇心旺盛なおしゃべり好きの女子たちがね。全部、あなたと、その大きなおしゃべりのせいよ」


「私は何も嘘をついてないよ」


「あら、そう? ただ、とっても、とっても、とっても、とーっても誤解を招く言い方をしただけでしょ」


「どうしろっていうの? 私は言葉が得意じゃないのよ……。でも、あなたは戦うのが得意じゃないんだから、馬車に戻って」


「まあ、あなたは言葉が得意じゃないけど、それでも話すのをやめたわけじゃないじゃない。それなら、戦うのが苦手だからって、私が何発か殴ってみるのを止める理由にはならないでしょ?」


「本気で、あの獣たちを殴れると思ってるの?」


「誰があいつらを殴りたいなんて言ったの?」


彼女は「あいつら」という部分を強調して答えた。


2

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「でぇ、あんたたちは?」


王(ワン)さんが、もう一度尋ねた。


「男の意地にかけて、俺たちだけが危険を冒すのを見過ごすわけにはいかない!」


中村(なかむら)くんは空を見上げ、背筋を伸ばしたまま叫んだ。


「その馬鹿げた男の意地とやらはさておき、あんたたちには自分の身を守る毛皮の外套すらないでしょ!」


彼は高橋(たかはし)さんを見た。彼女もまた、夏服の制服しか身につけていなかった。


「分かった、分かった。少なくとも、あんたたちは戦えるの?」


「俺たちは、あいつらのうち一体を追い払ったことがあります、閣下……いや、姐さん!」


「本当?」


「はい! 偉大なるマスターの秘伝の化学兵器によって、非常に効果的に追い払いました、閣下!」


中村(なかむら)くんの仲間の一人が叫んだ。


3

---------

「先生は?」


王(ワン)さんが、もう一度尋ねた。


「えっと……私は……生徒たちだけに危険を冒させるわけにはいかないから……」


「先生、ここにいる全員が先生の生徒ってわけじゃないよ……」


「えっと……この状況では、学校の教職員としてここにいるのは私だけだから、全員の安全に責任を持たなきゃいけないの」


「先生も防寒用の外套を持ってないじゃん。先生まで私たちのお荷物になるよ」


「が……頑張ります!」


「それじゃあ、あまり安心できないな。せめて戦えれば……」


その瞬間、狼のような生き物の一体が彼女たちへ向かって進み出た。特に、その標的は佐藤(さとう)先生だった。


しかし、王(ワン)さんが二人の間に飛び込むよりも先に、先生は回し蹴りでその攻撃を弾き飛ばした。


「以上!」


王(ワン)さんが言った。


4

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「ヴ・ナヌガ・ジオル・ド・オモブ? グルマニ・ボドレ!」


馬車の外に出ている生徒たちと先生を見て、戦士の一人が言った。


しかし、佐藤(さとう)先生の回し蹴りを見ると、彼は黙った。


数の上では、今や防衛側が全体として、およそ2対1の割合で優勢になっていた。


しかし、その大半は装備が不十分であるか、まったく武装していなかった。


そして何より、夜の帳が急速に下りようとしていた。その暗闇の中では、彼らは極めて無防備になってしまう。


5

---------

森のどこかから、低く長く響く音に、高い倍音が重なった遠吠えが聞こえてきた。


アオォォォォォォォォォォォォォォォォ……

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