第六十三話:危なくても受動的にならない (その一)
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外では、戦士たちが狼のような生き物たちを近づけまいと、必死に食い止めていた。一方、獣たちは、守りを突破して生徒たちを襲う別の機会をうかがっているようだった。
もし生き物たちが、学校の皆さんを簡単に食べられる獲物だと判断していたのなら、その認識は改めたほうがよかった。
男子生徒たちの乗る馬車の一台に入り込んだ狼のような生き物は、乗客の一人に覆いかぶさり、顔を食いちぎろうと激しく噛みついていた。しかし、襲われた生徒は、右前腕をその喉に押しつけ、鋭い牙を自分の顔から遠ざけることができていた。ほかの乗客たちの多くは後ろへ下がり、ただでさえ狭い空間で、さらに身体を押し詰めることになった。
そして――
ブーッ
硫黄のような臭いが、たちまち全員の鼻腔を満たした。何より、それを一番強く感じたのは獣自身だった。
獣は頭を振り、前脚で自分の鼻先をこすり、それから馬車の外へ飛び出した。
全員が中村くんを見た。
そして、こんなに狭い場所にもかかわらず、全員が土下座した。
「マスター!」
声を揃えて叫んだ。
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その一方で、別の狼のような生き物が防衛線の隙を見つけ、別の馬車へ飛び込んだ。
女子たちの乗る馬車だった。
悲鳴が上がる中、獣は女子の一人の腕に噛みついた。
幸い、彼女は戦士たちから借りた毛皮の外套の一つを着ていた。臭かったものの、分厚い毛皮のおかげで、左腕を食いちぎられずに済んだ。
とはいえ、痛くなかったわけではない。彼女が顔をしかめている様子を見れば、それは明らかだった。
「助けて!」
女子が叫んだ。
ほかの女子たちは目を大きく見開いて見つめていた。大半は口をあんぐりと開け、中には両手で口と鼻を覆っている者もいた。
そんな光景の中で、ようやく王さんが目を覚ました。
しかし、何が起きているのかを理解するまでには、当然ながら少し時間がかかった。
彼女は顔をしかめながら頭をこすった。
そして、全員が同じ方向を見ていることに気づくと、自分もそちらへ視線を向けた。
彼女はすぐに上体を起こし、それから身をかがめると、獣へ飛びかかって、獣の首をしっかりと抱え込んだ。
獣は激しくもがき、露出した彼女の脚を後ろ脚の爪で引っかいた。
それでも彼女は首を絞め続けた。
獣はそれまで襲っていた獲物を放し、なおも激しく暴れ続けた。その脚で相手にさらに傷を負わせながら。
そこへ、ほかの女子たちも何人か加わった。
そして間もなく、狼のような生き物の上には、合計約400キロもの女子たちが折り重なっていた。
それだけあれば、肋骨を折るには十分だった。
激しい苦痛に襲われ、呼吸も著しく妨げられたことで、その獣は動くことができなくなった。
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仲間たちも何が起きているのか本当のところは分かっていなかったため、王さんは状況を確認するため、とりあえず馬車の外へ首を伸ばした。
「危ないよ、静! 中に戻って!」
高橋さんが友人を引っ張った。
すると王さんは、天井でも見ているかのように頭を上げ、目を左上へ向けた。
「ああ、もう。あれ、またやってる……」
高橋さんがつぶやいた。
「何を?」
女子の一人が尋ねた。
「何か企んでる……」
高橋さんはそう答えながら、頭を下げ、右手の人差し指と親指を額に押しつけた。
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そして――
「その外套、しばらく貸してくれない?」
王さんが、狼のような生き物に襲われた女子に尋ねた。
まだ震えていた女子は、うなずいた。
「すっちゃん、はい!」
そう言って、彼女は外套を投げた。
「はい、部長!」
「何をするつもりなの?」
高橋さんが、念を押すように尋ねた。
「外では一種の膠着状態になっているみたい。でも、かなり脆い。ほかにも狼がいる……あれって狼なのかな? まあ、とにかく、あいつらが馬車の中にいる人たちを襲おうとしてる。つまり、私たちを」
「分かった。でも、何をするつもりなの?」
「このまま、あいつらが最終的に目的を達成するのを待つこともできる。でも、何かしてみることもできる」
「分かった。でも、何をするつもりなの?」
「私たちに有利な形で、膠着状態を崩す」
「分かった。でも、何をするつもりなの?」
「簡単よ。女子柔道部のみんなと一緒に、私が外へ行く」
「やっぱり! だから言ったでしょ、外は危険だって。ついさっきまで意識を失ってたんだよ。命を危険にさらすなんて、絶対に許さない」
「でも、ここにいたって、あいつらと戦ったって、命を危険にさらしてるのは同じでしょ。それに、同じ男と寝たことがあって、お互いの身体のデリケートな部分に触れたことがあるからって、あなたが私を所有してるわけじゃないんだから」
それを聞いた高橋さんは、身体を完全に丸めるようにして、真っ赤になった。
一方、王さんは、出せる限りの大声で叫んだ――彼女は本当に、とてつもなく大きな声を出すことができた。
「女性柔道部の皆さん! 毛皮の外套を持っていける人は、持っていって。持っていけない人は、そのまま馬車の中にいて。次に、慎重に馬車の右側から頭を出して、私がどの馬車にいるか確認して。私の合図で馬車を降りて、私のところに来て!」
30秒もしないうちに、女子柔道部の部員たちは馬車の外に集まった。
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高橋さんの馬車にいた人たちは皆、無言で彼女に問いかけているかのように、食い入るような目で見つめていた。
「ご……誤解だよ……」
彼女はつぶやいた。




