第六十話:混沌であっても見失わない (その二)
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ボンジュルは全速力で突進してきた。小林さんと中村くんは地面に倒れていた。生き物が一方の頭を攻撃の構えのように傾けると、彼は彼女に覆いかぶさるようにして身を伏せた。しかし、攻撃が繰り出される代わりに、二人は戦士の一人にぶつかられ、進路の外へ押し出された。その戦士はイノシシのような生き物の突進をまともに受け、宙へ放り出された。
そこから約20メートル離れた場所では、混乱と影に半ば隠れるようにして、二人の戦士が横転した物資用の馬車から、割れずに残っていた酒の壺を集めていた。そこへ、三人目の戦士が松明を持って近づいてきた。
「オイ・ウドゥラ! ナヌガ・ジオル?」
彼は二人に向かって叫んだ。
驚いた二人組の一人が、酒の壺を一つ、地面に落としてしまい、中身が雪の上に飛び散った。松明を持った戦士はその出来事に気を取られ、その隙を利用して二人は走って逃げた。そのうちの一人がその戦士にぶつかり、戦士は松明を落とした。
松明が地面に落ちると、すぐに酒に火が燃え移った。炎は広がり、馬車や物資に燃え移ろうとしていた。しかし、戦士は素早く動き、雪を蹴りかけて火を消した。
しかし、二人の略奪者はすでに姿を消していた。
「今の見た、みっちゃん?」
伊藤さんが尋ねた。
「何を? 男たちの顔? ううん、暗すぎて見えなかった……」
田中さんが答えた。
「違う……火よ……」
「ああ。まあ、度数の高い酒は燃えやすいから……」
「違うの。そういうことじゃなくて……」
「じゃあ、何?」
しかし、伊藤さんは答えなかった。何かを探そうとするかのように、周囲を見回していた。
2
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イノシシのような生き物は、小林さんと中村くんのいる方向へ向かって再び進み始めた。しかし、そのとき――
ウィーウィー
火がついた。
伊藤さんが、戦士が落とした松明を拾い、それを生き物へ投げつけたのだ。酒でびしょ濡れになっていた身体に、すぐに火が燃え移った。付着していた穀物が酒の蒸発を抑えると同時に、追加の固形燃料となり、燃焼を長引かせた。
生き物は雪の上を転がったが、火を消すことはできなかった。
焼けた毛の臭いは、本当にひどかった。
ウィーウィー
やがて火は皮膚を傷め、皮下脂肪にまで達した。脂肪が溶けると、毛細管現象によってロープの繊維に吸い上げられ、さらに火を燃え上がらせた。
生き物は身体を激しく震わせ、脚を蹴り、悲鳴を上げ、地面を転がり、あてもなく走り回った――その間にいくつものテントに火を燃え移らせながら。
ウィーウィー
それは約15分間続き、ついに倒れて息絶えた。
誰もがまだ何が起きたのか理解しようとしている中、黒焦げになった獣の身体が、動き始めたように見えた。
まだ生きているのか?
戦士たちが松明を手に近づいてくると、その動きが腹部に集中していることがはっきりと分かった。何かがその内部から出てこようとしているようだった。黒い球体。
それは次第に姿を変え、少し小さいことを除けば、完全なボンジュルの姿になった。
3
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新しいボンジュルが現れると、多くの生徒たちが、女子を中心に、男子までも悲鳴を上げた。動かず、炎に照らされたその恐ろしい姿が、はっきりと浮かび上がっていた。
伊藤さんは息を呑んだ。
二人の戦士が別の網を持って近づき、それを獣へ投げつけた。しかし、獣が再び攻撃を始めると、二人はまるで何でもないかのように、何メートルも簡単に引きずられた。やがて二人は網を手放した。
ブウウウゥ〜
獣は、生徒たちの集団の一つへ向かって進んだ。彼らは馬車を背にして追い詰められていた。
シュッ、シュッ、シュッ……ガンッ、ガンッ、ガンッ……
酒の入った壺がいくつも宙を飛び、獣にぶつかった。それは、先ほど横転した物資用馬車からの略奪を阻止した戦士の仕業だった。
そして――
ウィーウィー
彼は松明を投げつけた。獣に火が燃え移った。
しかし、今度は獣が雪の上を転がると、火は消えてしまった。
4
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誰かが伊藤さんの左肩を叩いた。彼女は身体をひねりながら悲鳴を上げた。
田中さんと二人の女子だった。
「行きましょう。ここは危険すぎる!」
田中さんが言った。
「でも、どこへ? どこへ行っても危険よ……」
「わ……分からない……。でも、あれからできるだけ遠くへ行こう」
最初のボンジュルの死骸の横を通り過ぎたところで、田中さんは言葉を止めた。死骸はまだ燃えていた。ゆっくりと。溶けた脂を吸い上げる残ったロープ網の炎が揺らめいている。
「ああ、今すぐカツ丼が食べたい!」
伊藤さんがため息をついた。
そして彼女は立ち止まり、不気味な食べ放題ホルモンを見つめた。毛の大半は焼け落ち、黒焦げになった皮膚には炭化した穀粒がこびりついていた。
突然、彼女は見えない地平線を見つめるかのように顔を上げ、握りしめた右手を左の手のひらに打ちつけた。
「私についてきて」
彼女はそう言った。
5
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「本当にここは安全なの、あっちゃん?」
女子の一人が尋ねた。
「ああ、いや。さっきも言ったけど、この辺りに安全な場所なんて、おそらくないわ」
伊藤さんが答えた。
「じゃあ、なんで私たちはこの壊れた馬車にいるの?」
「これのためよ……」
そう答え、彼女は馬の餌である穀物をひとつかみ見せた。




