第五十二話:何があっても諦めない (その一)
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「タ・ナ・カ?」
毛皮の外套をまとい、革の盾と使い込まれた鉄の剣を手にした戦士たちが尋ねた。
その言葉をきっかけに、ざわめきが乾いた野原を走る炎のように体育館中へ広がっていく。
――あいつらは誰だ?
あの怪物たちと同じような脅威なのか?
あの外套……めちゃくちゃカッコいい!
おい、あの剣、すげぇカッコいい!
「田中先輩を狙ってるのか?」
「みっちゃん? なんであいつらが彼女のこと知ってるんだ?」
「だから、なんでそんな呼び方するんだよ? 友人でもないし」
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毛皮の外套をまとった戦士たちが体育館へ入ってくると、生徒たちは道を空けるように左右へ退いた。
戦士たちは、人々の顔を一人ひとりじっと見つめていく。
「ガ・ガバガ・ナヌガ? ゲズ・ナイ・グァルイ・モノ・ナイ……」
先頭に立つ男が、そう呟いた。
傷跡や、日光にさらされて歳月を重ねた跡、さらには病気や自然の力によって刻まれたさまざまな痕跡に加え、男たちの顔には、首から下げていたスノーゴーグルによって残った日焼け跡と、首から下へ伸びる漆黒の刺青が刻まれていた。
そして、血痕もあった。彼らの顔や毛皮の外套には、血痕が点々と付着していた。
生徒たちは、男たちが空気の匂いを嗅ぐと、後ずさった。
「ゾラ・モ・ヨグ・ガング」
別の戦士が言った。
それから、彼らは周囲を見回した。
天井に開いた穴。その下に散らばる瓦礫。そして、とりわけ、トカゲのような姿をした怪物と、空を飛んでいた怪物の残骸。
肉片や骨、内臓の欠片は、ほとんど原形をとどめていなかった。
委員会の先頭にいた男がしゃがみ込み、そのうちの一片を拾い上げ、目の高さまで持ち上げた。
しばらくそれをじっと見つめ、匂いを嗅いだ。そして……それを口に入れ、咀嚼し、飲み込んだ。
「オボガル・ダガ」
男が言った。
他の男たちは目を大きく見開いた。
「オボガル・ダガ?」
口々に呟いた。
すると、しゃがんでいた男は別の肉片を拾い上げ、仲間たちに渡した。
一人ずつ、それをじっと観察し、匂いを嗅ぎ、そして一片を食べた。
ゆっくりと口を動かしながら首を傾げる者もいれば、力強く咀嚼しながら頷く者もいた。
その間、しゃがんでいた男は、別の種類の糸状の羽毛が付着しているように見える肉片を拾い上げた。
またしても、その一片をじっと見つめ、匂いを嗅ぎ、その味と食感を確かめる。そして……残った肉片を仲間たちへ配った。
「ズバイ・ガムヰ!」
全員が一斉に叫んだ。
3
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体育館にいた生徒たちは、男たちの様子を見つめていた。
警戒? 好奇心? 困惑?
その視線には、おそらくそのすべてが入り混じっていた。
「食べてる……。うわ、キモ……」
「お前だって肉食うだろ……」
「調理してからな……」
「刺身は生で出されるじゃん……」
「魚だろ。同じじゃないって……」
「まあ、厳密に言えば、俺たちだってみんな魚だから……」
「厳密に言えば、俺は魚を解体できるから……」
4
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体育館のフロアで起きている騒ぎには気づかぬまま、倉庫にいる人々には別の優先事項があった。
「そこにEVAマットを何枚か敷いてください」
渡辺くんの身体を運んでいた伊藤さんが言った。
泣いている田中さんと佐藤先生は、積み上げられたマットの中から何枚か取り出し、床に並べた。
その近くでは、高橋さん、王さん、そして二人の女子が、意識がほとんどない鈴木くんを支えていた。彼の身体は絶え間なく震えている。
「二人とも、もうちょっとだけ待って。こっちにもEVAマットを敷くから……さっちゃん、こっち手伝ってくれる?」
そう言ったのは王さんだった。
即席のベッドが用意されると、渡辺くんの身体と鈴木くんは、慎重にその上へ寝かされた。
5
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「震えてる……。ねえ、さっちゃん、どこ行くの?」
王さんが尋ねた。
「鈴木を温められるものを探してくる」
そう答えた高橋さんは、棚のほうへ向かった。
「何してるの、みっちゃん?」
伊藤さんが尋ねた。
「わ……私たち、諦めちゃダメ!」
田中さんは、CPRを再開しようとしながら言った。
「無駄だ!」
伊藤さんは、彼女を思いとどまらせようとした。
「無駄じゃない。もちろん、無駄なんかじゃ……ない……。そ……れ……は……違……う……。ま……だ……で……き……る……」
田中さんは、抑えきれないほど激しくすすり泣いた。
伊藤さんは、彼女を支えた。




